いつもはどこからかぎんぎーん!とかいけいけどんどーん!とか聞こえるのが普通だったが、今日は全く聞こえない。それは今日が忍術学園の休日だからだ。家に帰る人もいれば学園に残る人もいた。

「伊作、行こう」

私も学園に残ってゆっくりとした休日を過ごそうと思っていたのだが、昼食を終えた昼、部屋に伊作がやってきて散歩に行こうと誘われた。初夏の風を受けるのもまたいいかもしれない、と私は腰を上げたのだった。



「ねぇナマエ、ちょっと聞いてよ!」
「聞いてるよ、なに?」
「今日、僕一度も不運な目にあってないんだ!」
「そうなんだ…え、えええ!」

隣でにこにこしながら歩く伊作をまじまじと見る。確かにいつもはどこかしら怪我をして手当ての跡があるのだが、今日は全くない。初夏の風は伊作の頬をするりと通りすぎた。

「伊作…何か悪いものでも…」
「酷いなあ、食べてないよ!不運な目にあってないから、ナマエを散歩に誘っても大丈夫かなって思ったんだ」

そう言って伊作は私の手を握ってきた。じわじわと頬が熱くなる。
伊作と出かけると大抵私も不運な目にあうのであまり出かけることはなかったのだが、伊作の言葉に胸がきゅっとなった。それは多分伊作いつも不運でかわいそうという気持ちと伊作と(不運なしで)散歩できるのが嬉しいという気持ちが入り混じっている。伊作に顔赤いと言われ思わずそっぽ向く。

「ナマエは本当にかわ、うわああああっ」
「えっ」

突然引っ張られる体。次に鈍い衝撃。ああやっぱり伊作は不運だな、と脳内でため息をつく。ばふ、と二人して芝生の上に転がった。

「いてて…ナマエ!ナマエ大丈夫怪我ない!?」
「大丈夫だよもう慣れちゃった」

きっと石に躓いてこけたとこを道連れにされたんだろうなあと思っていたら自然と笑みがこぼれた。芝生の上に寝転がって空を見ると、澄んだ青が広がっている。雲一つも見当たらない。

「なんで笑ってるの」
「不運あっての伊作だなあって」
「えっ」
「でも楽しいし、私幸せだよ」

そう言って笑ってたら伊作も笑って、なんだかそれが可笑しくて二人で声を上げて笑った。ひーひー言ってる伊作を見てまた笑って、そうしてたらもう空も茜色に染まっていた。

(帰るときも不運な目にあったけど、二人だったら不運も半分こ)

みきさんリクエストありがとうございました!
明るめってなんなんだろう…と悩んでいる私に友人が「伊作と散歩なんてどう?」と提案してくれました。本当は寝転がってる伊作に鳥のフンを落とすというのを書くつもりだったんですが自重しました(^-^)
20120428.
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