兄さんは兄さんだからお兄さん

「あのさぁ」
「んー?」
「お前いつから俺のこと好きなの」
「……あー、えっとねェ……」
「ん」
「はっきり自覚したのは確か、中一……の時、だったかなぁ」
「……ん?それお前が虐められてた頃だろ?んなこと考えてる余裕あったんか?」
「んー…、というかねェ……俺さァ、その時、苑士兄さんに助けてもらったでしょう。それで好きになった感じかなァ。かっこよかったんだよ、思わず惚れちゃうくらい」
「……俺、そんな凄いことしたか?」
「まァ、覚えてないだろうねェ。あの時も苑士兄さんは苑士兄さんのままだったからさァ」
「わかるように言えっつの」
「本当に大したことじゃないんだって。一人でいる俺に躊躇いなく声かけてくれたり、落ち込んでたら頭わしわししてくれたり、なァんも言わないで俺の話ずぅっと聞いてくれてたり、そんな些細なことの積み重なりなんだから」
「……確かに大したことじゃねぇな」
「だろう?」
「でも、その時のお前には大したことだったんだな。俺にとっての“当然のこと”が」
「……うん」
「あの頃のお前はやたら図体ばっかでかくなってって、周りも自分も、心がついてってなかったんだろうなぁ」
「そうだねェ」
「今はどうよ?ちゃんと体の真ん中で収まってるか?」
「大分落ち着いたんじゃないかなァ。身近に精神安定剤もあるしねェ」
「……俺は薬か?」
「もっと質悪いかもねェ。手離せなくなっちゃってるもの」
「へぇ」
「…あららァ、スルーされちゃった」