≫賈クと賭け碁をする
![]() ちょっと打ってみて気付いたが、夢主がこれまた弱い。下手の横好きとかいうレベルじゃなく弱い。もうお前ルールを一から学び直せって位に弱い。相手が見つからないから一人でやってたんじゃなく、弱すぎて面白くないから誰も相手してくれないんじゃないのかと思うくらいに弱い。 幸い「手加減しないでね」と言っていたので遠慮なくフルボッコしたら、次の日からも暇な時は相手に誘われるように。だがしかし、殆ど勝敗の決まっている退屈な勝負をさせられるのはつまらない。そう言ったら夢主が「じゃあ賭けをしようか」と言い出した。 「まぁこの手の賭け事としてはありがちなものだけど、相手が叶えられそうなものならなんでもあり、ということでどうだい?」 「あははあ、いいんですか?そんなこと言っちまって。しれっととんでもないことを要求するかもしれませんよ?」 「身を削るような緊張感こそが賭け事の愉しみじゃないかな?」 「……成程ね」 まぁ言っても夢主くっそ弱いわけで、暫く一方的なフルボッコ祭りが続くわけです。賈クの命令もまぁ一応は客人相手なわけで、他愛ない悪戯の域を出ないものなんですが。多分ね。 「賈クよ、おぬし最近あやつと賭けをしておるらしいな」 「あぁ、まぁお遊びの域を出ない賭けですがね」 「お遊び、か。……あやつは何を要求しておるのだ?」 「まだ聞いたことないんですよ。『勝てると思った時に言う』ってね」 「ふむ……賈クよ、おぬしに一つ忠告しておいてやろう」 「はい?」 「あやつはな、郭嘉やこの儂よりも余程性質が悪い男だぞ。様々な意味でな」 曹操様と賈クがそんな話をした数日後、開始前に言われるわけです。 「私が勝ったら、君の身体を貰う」 「………………は?」 「私が勝った時の商品だよ。君と一発まぐわいたいんだ」 「…あっははあ、アンタ、随分と性質の悪い冗談を言うんだな」 「これでも真剣に口説いてるつもりなんだけどなぁ」 「…………アンタ、情緒って言葉知ってるか?」 「可憐な乙女を口説くならともかく、可愛いげの欠片もない髭面を口説くのに情緒なんぞ持ち出しても」 「あははぁ、それはそうだ。……ま、賭けの対象がなんであれ、結局は勝ちゃいいんだ。悪いが、俺も自分の身は惜しいんでね」 つい昨日までボロクソ状態だった夢主が勝つと豪語した自信の元が知りたかったのと、単純にちょっとイラッ☆と来たのとで承諾してしまった賭け内容。 結果は一目半差で夢主の勝利。 結果だけを見れば僅差での勝利だけど、実際に相手をしていた賈クには最中ずっと弄ばれてた上にわざとギリギリを狙って勝った事が解ってて愕然とする。 いつものようににこにこと眼前に座っている夢主に曹操様に忠告された意味が漸く飲み込めた賈ク。だが時すでに遅し。後悔先に立たずとはまさにこの事。 「…アンタ、ずっと手加減してやがったな…?」 「打ち辛かったのは確かだけどね。打ち筋がいやらしいんだよ、君」 「…………曹操殿がアンタに気を付けろって言ってた理由がわかったよ」 「因みに孟徳とは十回やったら三回は負けるよ、私」 つまりは最初から賈クを狙って罠に嵌めるための策略でした、という訳です。この夢主は臍が捻曲がって一周回って返ってきたような性格のため、真っ当に口説こうというつもりは最初からない。そもそも賈ク相手に正攻法で近付いたらかわされることをわかってる。だからって初っぱなから「ヤらせろ」はぶっ飛びすぎだと思いますおっさん。 「……性悪で悪食で厚顔、これで下手くそだったら救えないね」 「あっはっはっは、」 ――――口は災いの元だぞ、坊や? その性悪がやすやすと逃げの一手を許してくれる筈もなく、翌日には寝台の上でぴくりとも出来ない屍と心なしか若さを取り戻して見えるおっさんがいるのでした。 「でも気持ちよかっただろ?」 「…………アンタちょっと口閉じろ」 「唇で塞いでくれるなら大歓迎だが」 「………………」 |