≫野獣な賈充さんと爛れた関係になる
![]() そんな賈獣さんに狙われちゃったが運の尽きな司馬昭配下の文官な夢主。口癖は「ごめんなさい」と「すみません」。超がつくヘタレ。 背丈は昭ちゃん並にあるけど文官故にひょろい夢主は、考え事しながら歩いて壁や柱にぶつかったりずっこけたりするのが日常茶飯事。人にぶつかろうもんなら土下座と共に「ごめんなさいすみません本当に申し訳ございませんんんんん!!!」と絶叫謝罪がついてくる。見ていて危なっかしい夢主は郭淮殿と並んで晋の『色々と心配になる人』格付け上位者である。 昭ちゃんと接点のある二人とはいえ、普段から子上子上子上な賈充さんとは業務連絡程度しか交流がなかったのだけれども、とあることが切っ掛けで生活が一変してしまう。 ある日鳥の鳴き声で目を覚ますと、隣に賈充さんがお休みになっておられました。しかもお互い全裸。はっ?寝台の周囲には撒き散らされた二人分の衣服。えっ?布団のごわごわ加減やら、部屋に漂う空気やら、なによりすやすやと眠る賈充さんと自分の身体に残るキスマークやら噛み痕やら爪痕やら。ここまでで既に夢主顔面蒼白。混乱真っ只中の頭に走るのは鈍い痛み。 ……あーそうだ、昨日は先の戦の勝利を祝う宴会で司馬昭様にやたらと呑まされてべろんべろんに酔っ払ってしまって…ええと、ええと……? 「どうしよう全然記憶がない……!」 つまりは酒の上での不埒。夢主には酔っ払ったあとの記憶がなにもない。本当にない。綺麗さっぱり微塵もない。いやもう記憶がないとか言ってられないような状況なのは解りきってるんですが、解りたくないけど解りきってるんですが……!救いなのは尻が痛くないという事実。嬉しくない。叫びたくなるのを必死で押さえ込みながら、一先ずは服を着ようと寝台を抜け出そうとした矢先、 「…どこにいく…?」 人肌が逃げたことに反応したのか動く気配を察したのか、起きてしまった賈充さんの声に夢主びくーん!硬直している隙に捕まった身体が布団の中に逆戻り。しっかりと抱き寄せられ隙間なくくっついた身体はやはり裸で、そこで賈充さんがまた寝起きの掠れた色っぽい声で「…お前があんなに激しいとは思わなかった」だのなんだのと言ってくれちゃうもんだから夢主はそこでキャパシティオーバーでオーバーヒート。 「おわぁぁぁぁぁあああああああアアアアアア!!!!!!!!」 「…っ、五月蝿いぞ、黙れ」 「すみませんごめんなさいすみませんすみません私なんかが畏れ多くも賈充様にご無体を強いたりなんかしてしまってすみませんごめんなさぁぁぁああアアアアアア!!!」 「……おい、だから、」 「すみませんすみませんすみません首だろうとなんだろうと差し上げますすみませんごめんなさいいっそ殺せぇえええ!私を!今すぐ!殺してくれぇぇぇえええええ!!!!!」 「チッ…!」 羞恥と混乱の極みに達して絶叫しながら暴れる夢主を賈充さんがなんとか抑え込もうとするも、昨夜の行為の疲労からか夢主の火事場の馬鹿力かなかなかうまくいかず、最終的に馬乗りで両手を押さえ付けるような形に。そこに運悪く夢主の叫び声に何事かと駆け付けてきた女官やら昭ちゃんやらが部屋に来てしまうわけです。 「………………」 「………………」 「……わり、邪魔したな☆」 「ちょぉぉぉぉおおお!誤解!いや誤解じゃないけど誤解!誤解です司馬昭様ぁぁぁぁぁああああああ!!!!!」 いかにもヤっちゃった後の部屋の雰囲気と現在進行形で夢主に馬乗り状態の賈充さん。しかも二人の身体にはその痕跡が。これで言い逃れしようって方が無理。ヤってない方がおかしい。 一日にして駆け巡る夢主と賈充がそういう仲だという噂。女官と兵士達の生暖かい眼差しに涙しか浮かばない夢主。そのうち、あれはお互い酒の勢いでやっちゃったその日限りのことだし、噂は所詮噂だから普通にしてればいつかはなかったことになるだろう、と開き直ることにした。賈充さんもなにも言ってこないし、なにより男同士だし、お互い忘れるのが一番いい方法だろうと。 ただ立場上会う機会はそれなりにあるので、お互い気まずい思いをしないよう一度謝罪はしておくべきだろうと考える。 そうして律儀に謝りに会いに行けば、何故かそのまま押し倒された夢主。えっ、ちょっ、と制止する間もなくキスされ着物を剥がれ、どうやら真昼間っからコトに及ぼうとしていらっしゃる賈充さんに夢主またも顔面蒼白。 「い、いやいやいやいや賈充さむぐっ」 「…悪いが、俺には他人に見られて興奮するような趣味はないからな」 そんなの私にだってありませんというか私今日この間の非礼を謝罪に来たんですけどぉぉぉおおおオオオ?!?!?! あれひょっとしてあれか今度は私が掘られる側か、これが罰かと途中から諦めて大人しくしてれば、何故か普通に乗っかって喘ぎ出す賈充さん。 ちょっと待て本当に何がどうしてこうなった。 色気撒き散らしながら喘ぐ賈充さんに夢主はまたも流されて、謝罪も出来なければなんでこんなことをと問い詰めることも出来ず、そんな流れで月に一度から五日に一度位の頻度で身体の関係を持つように。会う度に物陰に引き込まれてキスされたりとかはもっとザラ。 最初は罪悪感と葛藤と苦悩で日々悶々としてた夢主も、回数重ねる度になんか気に入られちゃったんだな、と諦めるように。 地位としては賈充さんが上だし、元々自分の無礼から始まっちゃったことだし、拒否も出来ずにずるずると続いていく関係。 睦言を交わすわけでもなければ愛があるわけでもない、本当に欲を満たすためだけのそんな関係に不満というか物足りなさを感じ始めたのはいつだったか。 賈充さんとの爛れた関係が始まって丸々一年が経とうというある日、夢主はついに決心する。 「…もう、こんな関係やめましょう。いえ、やめさせてください」 「…………は?」 好きになっちゃった人と身体だけの関係なんて辛すぎて、耐え切れなくなって初めての夜よりひどい醜態をさらす前にとお別れを切り出す夢主。 だって辛い。きっと賈充さんが欲しいのは相性のいい身体だけで、好きだとか愛してるだとか、そんな感情までは求めていないだろうと。むしろ鬱陶しいとすら思われるだろうと。事の発端は自分だし、この関係を続けるか否かを決める権利なんて元から夢主にはないけれど、燻った気持ちを抱えたままいつか突然「飽きたから」と捨てられでもしたらそちらの方が耐えられない。 「ごめんなさい、無体を働いたりしてごめんなさい、すみません、好きになってしまって、身体だけしかいらないのに、こんな気持ち鬱陶しいだけなのに、好きになってしまって、ごめんなさい、ほんとうにごめんなさい、だから、お願いです、嫌なんです、私は身体だけじゃ嫌なんです、耐えられないんです、だからお願いです、全てを諦められる内に、終わらせてください…っ」 涙ながらに訴える夢主に、しかして賈充さんが出した答えは「否」。なんで。どうして。ぼろ泣き状態の夢主に訝しげな顔をしながら、賈充さんが言い放ったのは驚愕の事実。 「…俺は、ちゃんとお前に告白しただろう」 「…………はっ?」 賈充さんの台詞に思わず夢主の涙も引っ込んだ。 賈充さんいわく、夢主と賈充さんが初めて関係を持ったあの日、賈充さんは夢主に想いを告げてちゃんと肯定の返事を貰っていたと。 「…確かにあの日は酒も入っていたが、喋り口も受け答えもはっきりしていたから、それほど酔ってはいなかったのだと…」 「………………すみません」 「……覚えていないんだな」 「すみまっ、むぐっ」 「謝罪はいらぬ。……酒の勢いで既成事実だけでも作ってしまおうと考えたのは事実だからな」 「んむぅっ?!…っな、はぁあ?!」 「…まぁ、結果的にはお前の心も手に入ったわけだ…なぁ?」 「…賈充さま…」 「くく……俺は、それだけお前が欲しかった。それだけのことだ」 こうして、二人は無事(?)両想いとなるわけですが、むしろ大変なのはこの後だったりする。賈充さんが並々ならぬ独占欲を発揮したり、身体から入っちゃった関係だからと普通の恋人やろうとして今更な感じになっちゃったり。 とりあえず不憫でへたれな夢主が肉食系賈充さん(ただし彼はネコ)に目をつけられてひぃひぃ言ってる話が読みたいなって話。 |