……とまぁ、実はここまでが前置きだったりします。長いね。
本編はこの前置き話からの転生後、記憶持ちで転生した皆の話になります。記憶に関しては生まれ持ってる人と育つ間に断片的に思い出す人がいたりするわけですが、まぁそれはひとまず置いといて。

時は平成、舞台は現代。
運命の導きかはたまた幾重にも重なった偶然が形作った奇跡か、現代に過去の記憶を持ったまま転生したかつての武将達は、それぞれが導かれるようにひとつの学園へと、生徒として、あるいは教師として集まっておりました。

そこには、かつて彼等がその手にかけたあの青年もおりました。
かつての罪に喘ぎ咽んでいた孫呉の彼等は、その再会を喜び、廻り合いの奇跡に感謝して、青年へ謝罪と贖罪をしようと思い立ちます。

ところが青年には、彼等とはひとつ、違っているところがありました。
青年は、前世の記憶を欠片も持ち合わせてはいなかったのです。

青年の周りには、かつての敵将達がいつも傍らに在りました。それはまるで自分達から青年を守る巨大で堅牢な城壁のようにも見えました。いいえ、実際そうだったのでしょう。
彼等もまた全てを覚えていました。それ故に孫呉の彼等が青年に何をしたのか、全てを知っていたのです。

彼等の目は語ります。「青年には近付くな」と。
彼等は嘲笑いながら語ります。「貴様等の罪だ、受け入れろ」と。

青年がなにも覚えていないのは、彼等にとってなにより重い罰でありました。
青年にあの日の許しを乞えず、青年に再び近付くことも叶わず、ただただ他の人と青年とが、ありし日の自分達としたように笑いあう姿をじっと見つめているしかできないのです。

何故だ。何故。何故忘れている。何故。何故。何故。何故。何故。何故。何故!

青年の幸せを願うのならば、確かに自分達が側にいることは不幸であるのでしょう。万にひとつ、青年があの頃のことを、自分達のことを思い出したとして、その先にあるのはあの悲劇です。自分達が一方的な謝罪を押し付けたとして、青年が受け入れてくれるとも限りません。

けれどもこれでは、あまりにも。

せめて一言だけでいい、「ごめん」と謝らせてほしい。
せめて一目だけでいい、その目に自分達を映してほしい。
せめて、一回だけでいい。その声で、自分達の名前を呼んでほしい。

全ては、遅すぎたことでありました。



……全編に渡ってシリアスというか重い話ですよね、うん。

因みに私の脳内設定では、この夢主も実は記憶はバッチリあるんですが、ないふりをしているだけだったりします。
蜀と魏のごく僅かな人だけはそれを知っていますが、他の人は全く気付いておらず、皆が皆夢主に騙されている感じ。

この時点で、夢主はかつての裏切りを恨みに思っているわけでも孫呉の彼等に謝罪や贖罪を求めている訳ではありません。だってそれは今の世で起こっていることではないのですから。
ただ、あの時代での出来事が少なからず夢主の気質に影響を及ぼしているのも確かで、転生後の夢主は極端にドライな気質になっています。
自分は自分、他人は他人。自分が被害を被らなければ何が起ころうと我関せず。
ただ一度人生を経験している身だし、人間関係の重要さも知っているし向上心の強い努力家であることは変わっていないので、常に人に囲まれ模範的な生徒である夢主は、なにも知らない人から見たら人望厚い優等生に映るという。

天女様(笑)も実はこの学校に転生というのかなんというのか、とにかく紛れ込んでいるのですが、誰も彼女に気付かないし実質周りが敵だらけなのでなんにもできません。

これ真面目に書こうとしたら多分途中で飽きる。