≫短文詰め合わせ(msu)


※改行無しの短文詰め合わせ
※ホモも現パロもあるよ


∵ 霊感男子と司馬昭とトトロ
「これさ、さつきとメイが死んでるって説があるんだよな」「影が無いってあれだね」「現実の幽霊も影はねぇの?」「あったら皆がその存在に気付けるんじゃないかな」「それもそうか」「……それにね、」「うん?」「この世には、気付かない方が幸せなことが沢山あると思うよ、僕は」


∵ 覚えてない郭嘉と覚えてる男
何時かの日、こいつにさよならを言ったのもこんな夕焼けの中だったなぁ、とぼんやり思い出して泣きたくなった。争いの無い、とは一概には言えない世だが、ずっと生きやすい世に生まれ変わっても側に居る男が、窓の外を眺めながらぽつりと言う。「……不思議だね」「なにが」「ずっと昔にも、君とこうして空を見ていた気がするんだ」それはわざとか、このやろう。


∵ 孫市と猫に引っ掻かれた男
頬に紅葉は多々あれど、引っ掻き傷はそうはない。予想はつくが問うてみれば「猫に引っ掻かれた」と、ひどく憮然とした答えが返る。随分と凶暴な猫だねぇ。笑えば犬のように威嚇の唸り声を上げられた。「なんじゃ、今日のあやつは随分と機嫌が悪いな」「猫に引っ掻かれたんだとさ」「……そういえば小十郎も似たようなことを言っておったな」犬に噛まれたとかなんとか……って、そりゃあ、おい、そういうことか?


∵ 松永と東大寺炎上
ごうごうと音を立てて燃え上がる炎が、淡々と世界を見つめる大仏をいっそう気味悪く照らしている。はたして、人の手によって煉獄に落とされた仏は一体何を思うのだろう。偶像の表情はぴくりとも動くことはなく、けれども私にはその顔が言い表せない憤怒に染まっているように見えた。「久秀様、久秀様、御仏はたいそう御立腹のようですよ」真剣に言ったのに、鼻で笑われた。解せぬ。


∵ 李典が字を呼ばせたい@月の舌
「まんせいさま」「様はいらねぇって」「まんせい、……さん」「だぁかぁら、敬称なんていらねぇからそのまま呼べって言ってんだろ?敬語はすっかり抜けたくせに、なんでそんなとこだけ諦め悪いんだお前」「……だって、」「ん?」「李典様は「曼成」……まんせい、は、俺のことを閨でだけ字で呼ぶだろう」「なっ……んだよ、それとこれがなんの関係が、」「字で呼び合うとなんだかいやらしい気分になってその場でヤっちまいたくなるから閨だけの呼び方にした「いきなりそこだけ正直になんな!ばか!!」


∵ 司馬幹成代とトウ艾と司馬師
「りっんっごっとっはーちみつ、こーおぉちゃのじゃむはあぷりこぉっとー♪」「……じゃむ、とは一体なんなのでしょうか、流れからして食べ物の類ということは予想出来ますが」「果物と砂糖と煮詰めて作る甘いタレのようなものらしい」「ぎっんっいっろっのってぃーすっぷーん、かべにほっおりなげたー♪」「てぃ、すっぷーん……?」「てぃーすぷーん、茶を飲む時に使う小さな匙のことだそうだ」「司馬幹様は一体どこでそのような言葉を覚えてくるのでしょうか」「天から降ってくるのだろう、あの妙な旋律も」「(……飽きた)……かっぱーがわたしのーきっちんーで、たーにーしゆーでてーる♪」「?!」


∵ 宗矩とお兄さんの熱帯夜
がらがらと、冷凍室の氷を掻き混ぜる音でぼんやりと目を覚ました。日本の夏は湿気がある分体感的にきつくて仕方がない。寝る前につけていたクーラーはとっくにタイマーで切れていて、それからどれだけ経っているのか、部屋全体の空気が生温く肌にベタつく。おやァ、起こしちゃったかい。氷の入ったグラスを手に布団に戻ってきた宗矩が、頬に何かを含んだまま、くぐもった声でそうのたまう。あぁ、起こされた。ベッドの上で半身だけを起こして、涼を求めて手を伸ばす。グラスの中で、溶け始めた氷がカランと小さく音を立てた。


∵ 大谷さんとハイタッチ
「からの無防備な袖口に腕突っ込んで二の腕ぷにぷに」「やめろ」「……思ったよりぷにぷにしてない」「だからやめろと」「ああ、うん、でもなんかいやらしくていいかも。着物の下で蠢く指先とか、こう、見えないが故の色っぽさ?みたいな?」「 お い 」「すんまっせん」