≫楽進を想う足の遅い鷹の目


史実では弓の名手だった(…よね?)楽進の射型に惚れて楽進の部隊に入ったけど、自身は足が遅いから突っ込んでいく楽進と部隊兵達を弓で援護する副将とかどうだろうと。

淵ちゃんから直属部隊に勧誘される位に弓の腕は確かなんだけど、機動力が自慢の楽進隊の中では最低の足の遅さ。戦場では大体騎乗。でないとついていけない。そんな足の遅さが幼い頃からのコンプレックスな夢主。
それでも将軍の気質故か素直でやや向こう見ずな人達が多い楽進隊の中では貴重な、広い視野と判断力の持ち主である夢主は兄や父のように慕われていたり。但し夢主も大概天然なのでうまく伝わってるかは定かではない。ある意味楽進に一番近い気質の夢主。つまりは天然×天然。
両想いでも伝わらないし気付かないしで両片想いになって中々くっつかないタイプ。見てる側がもどかしくなるタイプ。
お互い好き同士なのに擦れ違う、もどかしい感じがね、好きです。とても。

多分この二人の転機はあれですかね、戦場でうっかり部隊の皆に置いてかれて孤立しちゃった夢主が怪我しちゃって、それを猛省した楽進が夢主を前々から勧誘がかかってた淵ちゃん部隊に異動させちゃうっていう。まったくもっていらんお節介である。
時期的には……官渡……かな……?
部隊の皆もこれ以上自分達の世話を焼かせるためだけにいさせちゃならんと断腸の思いで異動を後押ししてしまう。お前ら天然もいい加減にせえよな余計なお世話。
悪気がないのが一番性質悪いっていう典型を行く楽進隊の皆さん。

一番槍を目指して駆ける皆の背中を守ることが生き甲斐だった夢主は突然の異動に愕然。笑顔で自分を送り出す部隊の皆に見捨てられた気分になる。
ああ、私、足手まといだったんですね。
孤立して、怪我までして、無様な姿を見せてしまって、確かに、今の私は勇猛果敢な楽進隊の面汚しですよね。
ごめんなさい、それでも、誰より速く勇猛に、戦場にきりこむ貴方達の背中が大好きでした、と口には出さないままに静かに異動を受け入れる。

ただでさえ怪我して落ち込んでたところに異動命令出されちゃったら追い討ちにしかなりませんわな。ああやっぱり、とも思うんでしょうけど、昔からのコンプレックスを無理矢理押し付けて抑え込んでまで縋りついていた立場を失ってしまったら、悲しいし落ち込まない訳がない。
淵ちゃんの部隊は確かに弓兵である自分の戦い方には合っているし、勉強にもなるし、楽進隊とは多少色合いが違ってもいい人ばかりの環境だったけれど、夢主の心にはやっぱりどこか穴が開いたまま。

夢主がその弓で成し遂げたかったのは、誰より速く駆けようとする人が転ばぬように、誰より前を向き続けるその人の視界が陰らぬように、前を行くその人が立ち止まることなく進めるようにすることだったのに。

一方夢主が抜けた楽進隊は、夢主が心配しないように強く速くあらねば!と意気込みこそ強くなるものの、今まで殆ど気付かない内にされてきたサポートが無くなったことが打ち身のようにじわじわと響いてきたり。
例えば、兵達の身体に傷が増えたり。
例えば、指令系統の伝達にほんの少しの遅れや誤差が生じてしまったり。
細々した違和感によるストレスって結構後から効いてくるもので、こんな時夢主がいたら、なんて無意識に考えてしまうくらいになった頃、城内で淵ちゃん部隊の人達と夢主が仲良さそうにしてるのを見てもやっとする。ここに来て漸くフラグが立った。
自分達といた頃のように、寧ろ自分達といた頃よりも楽しそうに笑っているように見える夢主にひたすら悶々とする楽進。それが恋心からくる嫉妬だとはまったく気付かない楽進は、李典あたりが突っついて諭して漸く自覚するんでしょうね。
かろうじて夢主は自覚してる。多分異動を命じられたあたりで。

で、まぁ多分この二人、例え恋心を自覚したとしても、お互いが『自分なんかがあの方と結ばれるなんて考えるだけでもおこがましい』とか面倒臭いこと考えているので、遠巻きにお互いを眺めるだけになります。自分に向けられた矢印にはとことんまで鈍い二人。面倒臭い。非常に面倒臭い。曹操様ですら「早くくっつけ面倒臭い」と言うレベルで面倒臭い。

こんな二人がどうやってくっつくか?
多分二人の近くにいる保護者属性(淵ちゃんと李典)がなんとかかんとか頑張って両想いなんだと自覚させるんじゃないですかね。三日三晩説諭して漸く信じてくれるレベルのにぶちんだと思います。二人共。

つまりは主に李典が不憫なだけのお話←