大人ぶったチビ。けど実力は大人以上のガキ。それが私の隊長だった。









隊長ったらチビでガキのくせにムカつくったらありゃしない。だって私が酒飲んで寝てたら殴って怒鳴る。仕事しろって、目の玉ひん剥いて叫び出す。嫌です隊長がやってくださいよ。へにゃりと笑うと、また彼の怒りは沸点を越えた。松本ォ!と叫ぶ姿はとってもヒステリック。チビのくせに威圧感だけはいっちょ前なんだから。ああ怖い怖い。氷輪丸で氷漬けにされたらたまんないもの。だから私は仕方なしに仕事をし始める。ぶちぶち文句を垂れながら。すると仕方のない奴だと言わんばかりに彼は溜め息を吐いた。上司として当然の態度ではあるけど、私の方が明らかに年上なのにね。自分で言うのもなんだけど彼と私では生きてきた年月が全く違う。その証拠に何でもないただ力を持つだけの魂魄だった彼を此方に導いたのは私なのだから。でもやっぱり仕方ない。隊長に見えないようにこっそり息を吐く。眼下には隊長、副隊長両名の直筆が必要な書類がわんさか溢れていた。

日番谷冬獅郎。

その名が書かれた書類に筆を下ろす。

松本乱菊。

その四文字を隣に書き込んだ。



私が連れてきたがきんちょの成長は凄まじく、あっさりと彼は私の隊長になってしまった。ぼうやと呼んでたあの頃が懐かしい。当時は今よりは可愛く……もなかったわね。私が遊びに行ってもにこりと笑いもしない。すかしたガキね!と言うと、誰がガキだ!とすぐに生意気に反抗してきた。そこで分かった。彼は別に好きで大人ぶっている訳ではないと。だって本当はとても餓鬼臭い。怒鳴られたら怒鳴り返す。馬鹿にされたら外に出そうが出さまいがやっぱり怒る。きっと、彼は受け入れられないことに慣れていて、だからこそ親しい人たちに心配掛けないように平静を装ってた。幼いながらにそれが周りにとって一番だと判断した。いつだって彼は冷静で、無愛想。本当に、この年の子供とは考えられないぐらいに頭が良い。オトナの悪い企みにだって気付いちゃう。他人の気持ちもすぐに分かっちゃう。だから隊長は自分以外を優先する。賢くて、優しいから。彼は我が儘を言わない、弱音を吐かない。小さな胸を精一杯張って頑張ってる。常に他隊の隊長と対等であろうとする姿、私は好きよ隊長。それは全て十番隊が馬鹿にされないため。あの小さな背中には十番隊の全ての隊
士の威信と誇りがあるのだから。



だから、私は彼をぼうやなんて二度と呼ばないと心に決めてる。彼が押し潰されようなら支えるとも。これが彼の副隊長である私の仕事。逆にそれ以外は仕事じゃないけどね。だぁって隊長ったら仕事早いもの。何も言わずにやってくれる隊長が悪い。今だってほら、なんだかんだで手伝ってくれてる。甘い甘い。隊長は甘納豆のように甘い。だからこうして私に逃げられてしまうのよ。やっぱり隊長もまだまだね。ふふっと笑いながら逃げ出してきた窓を見た。私への怒号、そして氷輪丸の解号。それが続けざまに聞こえて、窓の外にあった草木がぴしりと凍った。空気がきらきら、神秘的に光っている。細氷だった。それほどの冷気が彼の刀から放たれている。まるで呪詛のような強い怨念が籠もった声。これはいよいよ死ぬかしら。ダイヤモンド・ダストを背景に、私は急いで駆け出した。



チビでガキだけど可愛い可愛い私の隊長。私の支えなんかいらなくなるぐらい、立派な隊長になってください。
その日までしっかり副隊長を勤め上げてみせますから!






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