僕は人殺しだ。
そう言って一体何人の人が真に受けるだろうか。おそらく限りなく0に近いはずだ。ある人はまるで僕が奇怪なものであるかのように見るだろうし、またある人は鼻で笑ってこの話をなかったことにするだろう。しかし、それはその人たちが覚えていないからだ、知らないからだ。イマジンと呼ばれる怪物を。いや、怪物の姿をした人間を。

僕はイマジンが現れ、人々を襲う度に彼らを殺す。昔はただの怪物を倒しているのだと思ってた。現実的だけど、どこかがずれたファンタジーの中へたまたま迷い込んだだけ。僕が特異点で、ハナさんと知り合ったという偶然に偶然が重なって、へんてこな物語の主人公になってしまった、それだけだと思っていた。どんなに遭遇したイマジンたちが、モモタロスたちが人間らしくても、彼らは別の世界から来た怪物だと、僕は信じていた。
心のどこかに引っかかるものを感じながらも。

でも、その信じていたものは突如として壊れてしまった。未来からやってきた男、カイによって。彼は自分を特異点だと言った。その姿は人間だった。イマジンの時間から来た、まぎれもない人間だった。そう、イマジンは、モモタロスたちは人間らしい怪物なんかじゃない、人間そのものだったんだ。
その後、カイから知らされた一つの事実。

ぐにゃりと、世界が歪んだ。僕がこの時間を守るなら、彼らは消えてしまう。今まで一緒に戦ってきた仲間だ。そう、大事な、仲間。それが消えてしまう、あの時みたいに。砂となり、消えて、存在すらもなくなってしまうんだ。

やらなきゃいけないと思ったから、電王になろうと決心した。やれるだけのことはやろうと決めた。そうあの人が教えてくれたから。そして、電王になってから人が死ぬ場面を実際に何度も何度も見た。でも、僕がイマジンを倒せば時間は守られる、たくさんの人々の命が救われる。
だったらやるしかない。僕しかいないんだ。

僕にとって僕の時間はやっぱり大切だ。大勢の人が一瞬一瞬を生きている。僕の大事な人たちが生きている。じゃあ、その大事なものを守るために、大事なものを見捨てるのか。僕は大事なものを守るために戦っていたんじゃないのか。
何かが歪んでいる。どこかが矛盾している。

けど、僕の使命は時の運行を守ること。僕の時間を、それから先に在る未来を守ること。それは変わらない。彼らも僕の時間も助かる術を考えたけど、見つからなかった。ウラタロスすらも諦めていたことだ、僕のちっぽけな頭では見つかるはずがない。
だから仕方ない。彼らという仲間よりも僕の時間が大事。そう割り切ってしまっていた自分がどこかにいた。

それでも、その事実を受け止めるのは嫌だった。嫌で嫌でたまらなかった。だから一度立ち止まりもした。電王になったことに初めて泣いた。
そんな僕の手を取り、再び立ち上がらせたのは、モモタロスだった。

一緒に最後まで戦うと言ってくれた。
言葉には表さないけど、いつも僕のために考えてくれた。
僕のことを守るために自分は在ると言い切ってくれた。
僕と一緒なら消えることも怖くないと笑ってくれた。

みんな大事だ。ずっと一緒にいたかった。
消えると知っても、僕に手を貸すと、みんなは言ってくれた。だから、最後まで戦おうと心に誓った。こんな運命を背負わせた神ではなく、自分自身に。

いつか、イマジンとの戦いが終わる時、それが僕が彼らを殺す時。時間を守るために仲間を殺した時だ。
僕が特異点であることは、その罪を償うのに丁度いい。彼らを一生忘れないのだから。









僕は人殺しだ。








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