文|log 月やあらぬ(小十→政×誰か) あなたと俺と。 ずっと一緒だなんて、そんな幻想を抱いていた。 桜がはらはらと舞い散る春の宵。 でも、あなたは行ってしまった。 あいつと共に。 朧げな月影は、濃紺の闇から桜の木の周りを淡く示してみせた。 あなたと俺はきっと一つだったが、想いの全てまで一つにはなれなかったようだ。 焦がれる気持ちも、狂おしい嫉妬も、俺だけの想い。 そう気づいたら、世界が全く違って見えた。 月も、桜も。 一年前、あなたと見たはずの情景。 今はあいつがあなたの隣に腰掛けて、同じようにこの幻想を見ているんだろう。 (月やあらぬ 春や昔の春ならぬ わが身ひとつは もとの身にして) ××× これは、在原業平の「月やあらぬ春や昔の春ならぬわが身ひとつはもとの身にして」という和歌を知って妄想したものです。 訳は(月はあのときの月ではないのだろうか、春はあの時の春ではないのだろうか、私だけが以前のままの自分で)。愛する人を失ってしまった光景はどこか以前とは違って感じられる、そんな歌です。 小十郎は政宗の恋愛相手には選ばれなかった、そんな話。 |