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倦怠期(政佐)

 初めて手をつないで歩いた時は、とても気恥ずかしくて、でもお前の手の温もりが嬉しかったのを今でも覚えている。
 あのころはお前といるだけで幸せで、世界だってなんだって、きらきら光ってるように見えた。
 どこに行ってもお前がいるだけで新鮮だった。



 都会の喧噪の中、久しぶりに俺達は二人で出掛けている。
 隣で歩いていても、以前みたいにどきどきしたりはしない。
 ましてや、世界ががらりと変わって見えるなんてことはない。
 あれからいろいろあって、長い時が過ぎて、俺達は手を繋ぐこともない。
 前から来た男の左肩がぶつかった。
 普段ならするりと人込みをぬって進むのに、ぼーっとしていたから対応が遅れた。
「うわっ」
 すこしよろめいた俺を支えたのはお前の左腕。
「大丈夫か?」
 混雑している道の真ん中で止まる訳にはいかない。俺達はそのまま歩いて行く。
「大丈夫だよ」
 お前は掴んでいた俺の右腕を離す。
 そして、無言で差し出された左の手の平。
 少し戸惑って、でも、すこし嬉しくて。
 俺は温かい政宗の手をとった。
 変わらない力強さで、政宗は俺の手を引いた。



×××
 終わりかけの恋愛を書くのは好きです。
 でも、たとえ倦怠期だな〜と思っても愛は確かに残っていると思います。愛の質が違うだけで。
 



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