「俺と鬼道とユウナは『デスゾーン』、立向居は『ムゲン・ザ・ハンド』、他の皆もそれぞれ自分のメニューで特訓だ!」
「「「「おー!」」」」
帝国学園にやってきた私達は、ウォーミングアップ後、さっそく特訓を始めることとなった。
鬼道の提案より、『デスゾーン』という技を覚えることになった私と円堂は、元帝国学園である鬼道に、まずその技の説明を受ける。
バスでの移動中、音無さんに帝国学園の記録動画を見させてもらったため、それがどんな技であるのかはわかったが、なかなか難易度の高そうな技だった。
それぞれが回転し、生まれたエネルギーをボールに注ぎ込む。とにかく『デスゾーン』は三人の息を合わせることが重要な技のようだ。果たして今日中にマスターできるだろうか。
説明を終えると、鬼道は真剣な面持ちで言った。
「まずはその場で回転して、俺が合図をだしたらボールを正面にして止まる。いいな?」
「「ああ!」」
私達が返事をすると、鬼道が頷き、そして合図を出す。私達はそれに合わせて、くるくるとその場で回りだした。
さん、に、いち、
「ストップ!」
ピタッと止まり、視線を彷徨わせれば、左斜め前にボールを見つける。これじゃあ正面とは言えない。なかなか難しいな、と私は頬をかいた。
あの鬼道でさえも正面から少しズレてしまっているし、円堂なんかはボールを背にして立っている。鬼道曰く、実際に『デスゾーン』をチャレンジするのは、これができるようになってかららしい。なので、それから、私達は完璧にボールの正面に立てるまで何度も何度も回転を繰り返すこととなった。
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さん、に、いち、
「くっ、またズレる…!」
「うーん、もう少し右かなぁ。」
「三人の息を合わせるんだ。もう一度!」
さん、に、いち、
「う、わわっ!」
「大丈夫?円堂。」
「ああ、もう少しだったんだけどなー。」
転んだ円堂に手を貸せば、眩しい笑顔付きでお礼を言われる。服に付いた汚れを払いながら、円堂は「『デスゾーン』がこんなに大変だなんて思ってもみなかった」と呟いた。
「けど、かなりよくなったんじゃない?」
「ああ。帝国では完成までに一ヶ月以上かかっていたことを考えれば上出来だ。」
私と鬼道の会話を聞いた円堂はパッと表情を明るくし、「よし、もう一度だ!」と拳を胸元まで上げた。もう特訓を始めて何時間も立つ。次こそは絶対に成功させたい。
鬼道の合図でまた三人は回りだす。だんだん掴めてきたタイミング。回転しながらボールと互いの位置を意識する。そろそろだ。
さん、に、いち、
「ストップ!」
「……っ、これでどうだ!」
少し揺れはしたものの、しっかりとボールの正面で止まった私と円堂に、鬼道はフッと笑みを溢し「おまけの合格ってとこだな」と言った。
ーーそのときだった。
「やってるな、鬼道。」
突然聞こえた覚えのない声に振り返れば、そこには帝国学園のユニフォームに身を包んだ、鬼道の嘗てのチームメイト
ーー帝国イレブンが立っていた。
どうやら鬼道が呼んでいたらしい帝国イレブンと急遽、練習試合を行うことになった雷門イレブン。しかし、なぜか私と円堂と鬼道は帝国学園のユニフォームを着用し、帝国学園側でプレイすることになった。
『デスゾーン』は帝国が完成した必殺技、習得するには実際に帝国と一緒にプレイした方が良いのだという。そうだとしてもさぁ…、と私は訝しげに口を開いた。
「いきなり試合で試すなんて、本当に大丈夫なの?」
「あそこまでできるようになれば、後は実戦形式で覚えるだけだ。」
「ああ!絶対に完成させよーぜ!」
何だかとてもやる気満々な二人に、私は不安になるだけ無駄かと息を溢す。……そうだな。悩んでいても仕方ないし、やれるだけやってみよう。何十回や何百回、何千回だってチャレンジすれば、きっと成果は現れるはずだ。
試合開始のホイッスルが鳴り響く。私はボールを追いかけて、ただ夢中で走り出した。
完成するまで何度でも
完成したらそれで終わりだなんて、誰も言ってなかった。
まさか『テスゾーン』を成功させた後、さらにそれを超える必殺技の特訓をすることになるなんて、誰が想像しただろうか。
何度も挑戦と失敗を繰り返し、皆の協力を得て、漸く完成させた私達の新必殺技。鬼道はこれを『デスゾーン2』と名付けた。
雷門イレブン達だけでなく、帝国イレブンの皆も、この技の完成には心から喜んでくれて、これならエイリア学園にも通用するだろうとその場が大いに盛り上がりを見せていた、そんなときだった。
突然、私達の前に姿を現したガゼルとバーン。彼らは言った。「我らはカオス」と。
彼らの後ろには敵対関係にあったはずの、ダイヤモンドダストとプロミネンスのメンバーが並んで立っている。彼らは自分達こそが宇宙最強のチームであると告げ、雷門イレブンに勝負を挑んできた。
試合は二日後、場所は帝国スタジアムで。そうして、カオスのメンバーは一方的に約束を取り付けると、エイリアボールを使い、早々とこの場から去って行ってしまった。
「……まさか、ダイヤモンドダストとプロミネンスが手を組むだなんて。」
ザ・ジェネシスの称号を巡って争っていた両チームがどうして、と疑問を抱く。ジェミニストームがエイリア学園を追放されてからのことを、私は何も知らないのだ。
今、一体エイリア学園では何が起こっているんだろう。あの別れ際に見たグランの悲愴な表情を思い浮かべ、私は下唇をギュッと噛んだ。
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