バーン様は自ら『炎のストライカー』だと名乗り、実力を見るためにテストをしてくれと雷門イレブンに頼んだ。
テストの内容は、雷門イレブン対バーン様で勝負し、点をとれればバーン様の勝ち。テストに合格だという。威勢のいい声でルールを説明するバーン様に、「テストをしてくれっていう割に、随分仕切るよね…」と財前塔子は呆れた表情を浮かべていたが、全く同感である。

円堂守の「よし、やろう。テスト!」という声により、私達は土方に教えてもらった一番近くにあるサッカー場へと移動した。




「なっ、飛んだ…!?」

「おい!こんなのさっきは見せなかったぜ…!?」


テスト開始早々、ボールと共に飛び上がったバーン様に、雷門イレブン達は驚愕する。一気に選手を何人も抜かし、DFの財前塔子と吹雪士郎の必殺技も軽くいなしたバーン様は、あっという間にゴール前へと辿り着く。
その様子を見ていた木野さんは「地面に足がついてるより、飛んでる時間の方が長いかも…」と呟いた。


「紅蓮の炎で焼き尽くしてやる…!」


そう言って、バーン様は必殺シュート『アトミックフレア』で、ゴールを決める。円堂守の『マジン・ザ・ハンド』でも止められない彼のシュートはとても強烈で、雷門イレブン達は「すげー!」と目を輝かせた。


「監督…!」

「豪炎寺くんじゃなかったけど、彼なら強力な戦力になりますね!」


マネージャーの子達も嬉しそうに、瞳子姉さんへと視線を移す。そこでは、すっかりバーン様のお迎えムードができあがっていた。彼と仲間になんて、なれるはずないのに…。
私は彼の正体を知っていながら、皆に黙っていることに後ろめたさを感じていた。罪悪感なんて、そんなもの私が持つべきではないとわかっているのだが、どうしようもなく胸が痛い。そんな中途半端な気持ちでいる自分が心底嫌だった。

私の様子がおかしいことに気付いた音無さんが「どうかしました?顔色が悪いですよ」と心配そうに尋ねてきたけれど、何も言えない私はただ首を横に振ることしかできなかった。


「監督!南雲をチームに入れます。いいですよね?」


「うちのチームで一緒に戦おうぜ!」と言ってバーン様と握手をした後、円堂守は瞳子姉さんにそう尋ねた。
当然、即OKが貰えると思っていた彼らだったが、瞳子姉さんは「大きな戦力になることは認めましょう。ただ、その前にいくつか質問があるわ」と言って、ベンチから立ち上がった。


「これから一緒に戦っていく以上、私にはあなたの身柄を預かっていく責任があります。まず、あなたはどこの学校の生徒なの、…っ!?」


話しながらバーン様に近づいて行った瞳子姉さんだったが、途中でバーン様の鋭い眼光にはっとする。突然、殺気を孕んだ視線を向けてきたバーン様に、動揺する雷門イレブン達であったが、バーン様が見ていたものとはその遥か向こうにあった。


「エイリア学園だよ。」

「「「「っ!?」」」」


「ぐ、グラン様…。」


バーン様の視線の先にいた人物、そして塔の上から聞こえてきた声の主は、なんとグラン様だった。思っていたよりも早い再会に、トクリと鼓動が速まる。


「チッ、邪魔すんなよ、グラン…!」


自分の代わりに瞳子姉さんの質問に答え、真実を明かしてしまったグラン様に、バーン様はかなりご立腹のようだ。彼は大きな舌打ちと共に、その顔をさらに険しくさせる。どうやら、もう本性を隠す気は全くないらしい。


「雷門イレブンに入り込んで、何をするつもりだったんだ?」

「俺はグランのお気に入りがどんな奴か、見に来ただけよ。」

「……騙されちゃ駄目だよ。円堂くん。」


グラン様はそう言うと、エイリアボールをこちらに向かって躊躇なく蹴り飛ばした。勢いよく飛んできたエイリアボールを必殺技で止めようとした円堂守だったが、そんな彼を飛び越えて、余裕の表情でボールを蹴り返したバーン様は、瞬く間に宇宙人の姿へと変化する。その姿を見て、雷門イレブンは一驚した。


「南雲、お前…!」

「俺か?こっちが本当の俺、バーンっていうんだ。覚えときな。」

「バーン…!」

「エイリア学園プロミネンスのキャプテンだ。」


唖然とする雷門イレブンに自己紹介したバーン様は、私へと視線をうつして口角を上げた。「ジュピターは久しぶりだなぁ?」と楽しそうに笑ったバーン様に、私は何も言えず、その場に立ち尽す。唯々、バーン様のことが怖かったのだ。
そんな私の反応に興味を失ったのか、元より大して興味を持っていなかったのか。バーン様はまたグラン様に目を向けると、一人でペラペラと話し始めた。


「グランよぉ、こいつらはジェミニストームを倒した。イプシロンとも引き分けた。お前らとやった後、まだまだ強くなるかもしれねえ。だから、どれだけ面白い奴らか近くで見てやろうと思った。」


バーン様はフンッと鼻で笑って言った。まるで挑発するように。


「俺は俺のやりたいようにやる。もし、俺らの邪魔になるようなら…、潰すぜ?お前らより先になぁ…!」


その言葉に反応したグラン様は、塔の上から凄いスピードで地面へと降り立った。その勢いで辺りに砂埃が舞う。何も見えない。
数秒して、漸く目が開けられるようになると、そこではグラン様とバーン様が一定の距離をとり、互いに睨みを利かせていた。


「…潰すと言ったね?それは得策じゃない。強い奴は俺達の仲間にしてもいい。違うかい?」

「仲間…?こんな奴らをか?」


バーン様は理解できないと言った顔でぐるりと周囲を見渡し、私のところで目を止めた。ニヤリと口元を緩めた彼に、全身が強張る。嫌な予感しかしなかった。
バーン様は意地の悪そうな笑みを浮かべたまま、グラン様へと視線を戻すと、嘲りを含んだ声で言った。


「ああ、ジュピターをもう一度仲間にしたいってんなら、俺も賛成だぜ?ジェミニストームは弱っちいチームだったが、こいつはそこそこ使えるからな。なんなら、俺のチームに入れてやらなくもねぇ。」

「っ、違う。そんなことは絶対にさせない…!」

「!?」

「グラン、さま…?」


バーン様の言葉のどこが癇に障ったのかはわからないが、激しい剣幕を見せたグラン様はエイリアボールをバーン様に向かって、勢いよく蹴り飛ばした。途端にエイリアボールから白い光が放たれる。そのあまりの眩しさに、私を含め、その場にいた者達は目を瞑った。
どうやら、別の場所にワープさせるつもりらしい。消える直前、グラン様は先程の剣幕が嘘のように、優しい声色で言った。


「ジュピター、安心して。もう君に酷いことをさせたりしない。君が望むものは、俺が叶えてあげる。君の苦しみは、俺が全部引き受けるから。」

「グラン様…。」

「俺はジュピターの味方だよ。」


目を開ければ、もうそこにはグラン様の姿も、バーン様の姿もなかった。


「……グラン様はやっぱり何もわかってない。」


ポロリ、と涙が零れ落ちる。
悔しかった。グラン様はいつだって私のことを大切に想ってくれている。その想いがちゃんと伝わっているからこそ、私の心からの望みを理解してくれないグラン様に腹が立って仕方なかった。


「もう、こんなのやめたいんだ。何もかも、全部あの頃に戻ってほしい…。」


笑顔が絶えなかった、あの暖かなお日さま園に帰りたい。大好きなものばかりで溢れかえっていた、宝物のようなあの日々を取り戻したい。


「私は…っ、皆とまた、楽しくサッカーがやりたいんだよ…!」



その願いは届かない

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