「またお前達か。なぜ、此処にいる。」

「俺達が代わりに戦う…!」


どこへ行ってもジュピター達の前に現れる雷門中サッカー部達は、またもやサッカーで勝負を挑んできた。わざわざ北海道までやってくるとはご苦労なことだ。ジュピターはフッと鼻で笑うと、彼らを蔑むように言った。


「地球人の学習能力は想像以上に低いな。二度も敗れたのに、何故わからないのだ。我々には勝てないと。」

「宇宙人の想像力も大したことないね。私達がパワーアップしたとは思わないの?」

「ほう…、いいだろう。地球にはこんな言葉がある。“二度あることは三度ある”と…!」


願わくば、これで最後にしてほしい。そんな想いを込めて、ジュピターはボールを蹴り飛ばした。



どうやら試合はテレビ中継されるらしい。フィールドの周りには何台もの中継車が停められ、テレビ関係者が大慌てでカメラをセッティングしている。ここ数日で、ジュピター達もずいぶん有名になってしまったようだ。

対戦相手に目を向ければ、彼らは円陣を組んでいて、やる気いっぱいの様子である。その中に初めて見る選手も混じっていたが、そんなことはどうでもいいと、ジュピターはすぐに視線を反らした。
例え敵のチームに新しい仲間が加わろうが、ジュピター達がすべきことは変わらない。勝利をお父さんに捧げる、それだけのためにジュピター達はここにいるのだから。


「“勝てば官軍、負ければ賊軍”だ。わかっているな?」

「もちろんです。」

「お任せください。」


試合開始のホイッスルが、グラウンド中に鳴り響く。相手側のキックオフで、ゲームは動き出した。

染岡の足元にあったボールを、グリンコとパンドラが二人がかりで奪いとる。そして、すぐさまパスを繋ぎ、ジュピターのところまでボールを戻した。
ジュピターがディアムに目配せすると、こくりと頷いた彼がゴールへ向かって走り出す。ものすごいスピードだ。少し高めにボールを蹴り上げれば、それは加速したディアムの元へ寸分の狂いもなく飛んで行った。


「っこっちだ…!」

「なに!?」


しかし、それは土門によって空中でカットされてしまった。円堂の「ナイスカット!」という声が響き渡る。そして、カットされたボールをグリンコが拾うも、また風丸によって奪われてしまった。
試合開始早々の激しい攻防戦に、雪の中だというのに熱く盛り上がる観戦者達。まさか宇宙人と互角に戦えているとでも思っているのだろうか。おめでたい奴らだ、とジュピターは顔を歪めた。


(彼らは何もわかってないんだ。エイリア学園の真の恐ろしさを!人間如きが我々に勝てるはずがない…!)


このとき、ジュピター達はまだ全力を出し切ってはいなかった。しかし、想定外の動きを見せてくる雷門イレブンに、ジェミニストームのメンバーは少なからず動揺していた。彼らがパワーアップしたというのは、どうやら本当らしい。前回戦ったときと比べて、格段に動きがよくなっていた。

さらに、雷門イレブンに新しく加わった吹雪士郎によって、ジュピター達の蹴ったシュートはことごとく止められてしまう。苛立ちを隠しきれなくなってきたジュピターは、調子に乗っているであろう雷門イレブンに、力の差というものを見せしめるため、本気のシュートをお見舞いしてやることにした。

ゴールからかなり距離があるが、問題ない。


「“アストロブレイク”!!!」


ジュピターの必殺シュートだ。塔子、壁山、円堂がそれぞれ必殺技を出すが、ボールの威力は落ちることもなく、そのままゴールへと突き刺さる。先制点をとったのは、ジェミニストームであった。同時に前半終了のホイッスルが鳴り響く。前半は1−0で終了した。


「奴らは我々の動きに適応し始めています。油断はできません。」

「……人間め。我々に抵抗しても無意味だと教えてやる。」


ジュピターは唇を咬み、恨めしそうに雷門イレブンを凝視する。あんな能天気そうな奴らに自分達が負けるはずがない。どれだけ苦しい特訓を重ねてきたと思っているんだ。全てはお父さんのために、絶対負けるわけにはいかないと拳を強く握りしめた。


後半戦開始のホイッスルが鳴り響く。

今度はジュピター達、ジェミニストーム側のキックオフ。しかし、後半からFWとなった吹雪によって、ボールはすぐさま奪われてしまった。彼が放ったシュートは、ジェミニストームのGKゴルレオによって止められたが、それから何度もシュートの体制に入られる。
一体どういうことだ、と焦燥感を覚えるジュピター。スピードには自信がある彼女たちのドリブルも、相手の必殺技によって止められてしまう。パスもなかなか通らない。

もう、流れは完全に相手チームのものであった。


そして、ついに…



「我々が、失点…?」


雷門イレブン側のシュートが決まってしまった。


「我々エイリア学園が、ただの人間如きに敗れることなどありえない…。」


わなわなと口を震わせ、ジュピターは怯え切った表情でそう呟く。脳裏を過ぎるのは、父親やお日さま園の子供達の失望した顔。孤独になってしまった自分の姿。

そんなこと、絶対に


「あってはならないのだ…!」


全速力で走りだしたジュピターは、ボールをキープしていた風丸から瞬く間にボールを奪い取る。そして、ディアムの名を叫ぶと、意図を察した彼はすぐさまジュピターのもとまで駆け付けた。


「ディフェンス、来るぞ!」

「「おう!」」

「「“ユニバース ブラスト”!!!」」


ジュピターとディアムが繰り出した必殺シュートは、塔子の“ザ・タワー”と壁山の“ザ・ヴォール”を壊していく。しかし、それらによって威力を落としたシュートは、円堂の“マジン・ザ・ハンド”によって止められてしまった。


(そんな、どうして…!?このままじゃ、)

「行くぞ!反撃開始だ!」

「っ止めろ!シュートを打たせるな…!」


ジュピターの悲痛な叫び声がグラウンドに響く。ゴールの傍までボールを運んだ染岡に、カロンとコラルが構えるも、シュートを打つのは彼ではなかった。
最後の最後で、吹雪へとパスが回り、想定外のことに必殺技を出す間もなかったカロン達。そのまま吹雪の“エターナルブリザード”が決まり、ボールはゴールと共に凍り付いた。

そして、そこで試合終了のホイッスルが響き渡る。雷門イレブンの逆転勝利だ。


わあっと勝利を喜ぶ雷門イレブン達。もうサッカーによる破壊は起こらない、これで地球は救われたのだと安堵する観客達。そうして盛り上がる人間達を、ジュピター達は呆然と見つめていた。


「……我々が負け、たのか。一体どうして、」

「地球にはこんな言葉もあるわ。」



三度目の正直



女の子のその言葉に、ジュピターは「…なるほど、」と零して、俯いた。もう抗う気力も残っていない。彼女は、これでおしまいだと全てを諦め、迎えがやってくるのを静かに待った。

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