破壊された校舎、泣き叫ぶ人間達、傷だらけの選手達は倒れたまま動かない。


ああ、ここは地獄だろうか


「ここが地獄だって言うんなら、俺達は鬼か、それとも悪魔か…?」

「ゴリレオったら、おバカね。私達は鬼でも悪魔でもないわ。……ねえ、そうですよね?ジュピター様。」


強張った顔のゴリレオを、隣にいたリームが嘲笑する。そんな余裕あり気な表情を見せる彼女だけれど、私に同意を求めるその声は僅かにだが震えていた。
皆、怖いんだ。自分がやっていることが、どんなに悪いことかわかっているから。

目を背けたくなるような光景が、今目の前に広がっている。胃がねじれるように痛い。不安や罪悪感に押しつぶされそうになる。逃げたい。けれど、私達はこの現実を受け入れないといけなかった。

なぜなら、この地獄絵図を作り上げたのは、他ならぬ私達なのだから。


「……ああ。鬼でも悪魔でもない。私達は『宇宙人』だ。」


自分に言い聞かせるようにそう答える。私達は、もう戻れないところまで来てしまったんだ。




木戸川清修のサッカー部員や、雷門中のOB達とサッカーで勝負し、圧勝した私達はそれぞれの校舎を破壊した。これらは地球の秩序を決めるため、お父さんから命じられたことだった。

次は傘美野中へ向かおうと移動手段であるエイリアボールを足で転がしたとき、近くから悲鳴が聞こえてきた。見れば、私たちと同じくらいの子供達が、ボロボロになった校舎を目の前に、呆然と立ち尽くしている。
それはフットボールフロンティアで優勝し、帰ってきたばかりの雷門中サッカー部員達だった。


「…どうします?」

「人間達に恐怖心を植えつけてくるようにと、あの方に仰せつかっている。挨拶する時間くらいはあるだろう。」


私がそう言うと、ゴリレオとリームは顔を見合わせ、こくりと頷いた。先ほどの動揺した顔はどこへやったのやら、素早く宇宙人モードに切り替えた彼らは、本当に優秀な私のチームメイトである。
私は足元に転がるエイリアボールを静かに蹴り上げた。移動先は、あのキーパーの向こう側にある瓦礫の上がいいだろう。

エイリアボールから放たれた妖艶な紫色の光が、私達の姿を包み込む。視界いっぱいに広がるこの紫が晴れたとき、私達はまた悪逆非道の宇宙人を演じなければならないのだ。



ああ、この悪夢はいつまで続くんだろうか。


「宇宙人だ…!」「嘘だろ!?」と怯えた顔の子供達を視界に入れた私は、くすりと笑みを浮かべる。そして、予め用意していた台詞を、宇宙人っぽく、淡々とした口調で発した。


「我々は遠き星エイリアより、この星に舞い降りた星の使徒である。」



それが本当の始まりだった



私達を目の前に恐怖し絶望する子供たちの中で、誰よりも真っすぐ此方を見据えている大きな瞳とかち合う。
どうしてだかはわからない。けれど、まるでそこに引力が働いているかのように、私はその視線を反らすことができなかった。

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