続く続く、何処までも続く
迷い込んだら最後
もう、元の世界には戻れない

死へと続く、無限の階段
上っても、下っても
行き先は皆、同じところ…




待て待て待て……これは、ヤバいんじゃないかな!?今思い出したけど、階段って確か七不思議の一つに入ってたよね!?
せっかく古橋先輩に聞いておいたというのに、結局また怪奇現象に巻き込まれてしまったらしい。うわー、私の馬鹿!また真くんに『注意力が足りねぇんだよ、バァカ!』って言われちゃうよ。

私は、冷や汗を流しながら、これからどうしようか考えた。今回は私のせいで、この先輩まで巻き込んでしまったのだ。早く、どうにかしなくては…!


「これはあれか。『無限に続く階段』ってやつ。」

「えっ、先輩ご存知なんですか?!」

「まあ、有名だから。実際に体験したのはこれが初めてだよ。」


先輩は、案外落ち着いていて「さあて、どうするか」と辺りを見渡しながら言った。なんか、頼りになりそうな人だなぁ。
私達は下へ行っても階段しかなさそうなので、今度は逆に上ってみることにした。階段を上りながら、私は前を歩く先輩に頭を下げる。


「あの、先輩……すみません。実は私、こういう怪奇現象に巻き込まれやすい体質でして。こうなったのも、きっと私のせいなんです。」

「……へえ、面倒な体質だね。ご愁傷様。別に謝らなくていいよ。キミだって巻き込まれたくて巻き込まれてるわけじゃないんでしょ?」

(せ、先輩優しい…!カッコイイ!)


▼私の先輩への好感度が上がった!


「あっ、自己紹介がまだでしたね。私、1年のみょうじなまえっていいます。」

「俺は瀬戸健太郎。2年。」


瀬戸先輩は2年生だったのか!てっきり大きいから3年かと思った。ってことは、真くんと同じ部活で同じ学年かぁ。もしかしたら、仲が良いのかもしれないな。後で真くんに聞いてみよう。

そのまま暫く下りたり上ったり、また下りたりと。会話をしながら歩いていると、先輩が「もう部活は終わってる頃だろうな」と小さく呟いた。それに私は「そうですねー」と言って、携帯で現在の時間を見ようとポケットに手を突っ込んだ。


(………。)

「……あ!そうだ、携帯!」

「……持ってたんだ。」


はい。すみません!持ってました!

呆れ顔の瀬戸先輩に、あははと笑いながら携帯を出す。携帯の時計は、ちょうど18時40分を指していた。確か、教室を出たときは10分くらいだったから、もう30分も階段を上り下りしていることになる。うわ、そんなに立ってたのか。私は、そのままメールと着信履歴も確かめた。


「うわ、着信26件。メール12件って。」

「気持ち悪いな。誰から?」

「全部、幼なじみからです…。」


”真くん”の名前がずらっと並ぶ、気持ち悪い受信メール。そう言えば、マナーモードにしてたんだっけ。試しに何個か適当に開いてみると『今、何処だ』『電話に出ろ』『教室にいろ』という内容ばかりだった。ヤバい。これは、きっとお怒りだ。
私は、慌てて彼に電話をかける。すると、彼は1コールで電話に出た。怖。


「もしもし、まこt『何処に行やがる、ブス!』……いきなり、失礼だよ。」


ブスって……そりゃ、真くんからしたらブスでしょーよ。そんなんじゃ別に傷つかないもん。ぐすん。私は真くんに今の状況を説明することにした。


「あのね。今、階段にいるんだけど、下りても上ってもずっと階段で……多分、七不思議に出くわしちゃったみたいなの。」

『……はあ。お前は注意力が足りねぇんだよ、バァカ!』


ああ、やっぱり言われた。予想通りの彼の言葉に、私は苦笑を浮かべる。
真くんはどうやら私が携帯に出ないことを心配してくれたらしく、私の自宅に電話したり、学校中を探し回ってくれていたのだと言う。優しい。私は素直にお礼を言った。


「それで、どうしたら良いかな?」

『ちょっと待て。古橋に代わる。』

「え、古橋先輩も一緒に探してくれてたの?」

「……古橋?」


私の言葉に、ずっと黙って待っていてくれていた瀬戸先輩が反応を示す。そうだ、彼はバスケ部だっけ。
私は、瀬戸先輩にも聞こえるよう、スピーカーに設定を変える。すると、真くんと代わったらしい、古橋先輩の声が耳を当てなくとも聞こえてきた。

古橋先輩は真くんとは違い、落ち着いた声で言った。


『みょうじさん。俺と花宮も階段を何度か通ったが、無限ループはしなかったし、お前の姿も見なかった。多分、お前は別の世界に行ってしまったんだと思う。』

「別の世界、ですか…?」

『ああ。すまないが、俺も戻り方はわからない。……ただ、入り口があるのなら、そこに出口もあるはずだ。最初にいた階段に戻れれば、きっと何処かに此方の世界へと繋がる切れ目があると思う。』

「ええっ、最初にいた階段に戻らなきゃいけないんですか?!」


私たちは、上り下りを何度も繰り返していた。それにいちいち、何段上ったかとか下りたとか数えてなんかいない。なのに、どうやって元いた階段まで戻れと言うんだろうか。私は慌てて声を上げた。


「無理ですよ!30分も上り下りしてるんですよ?もといた段なんてわからn「134段だよ。」……え?」

「32段下りて、57段上って、159段下りた。つまり、今は134段目。134段上れば、始めの位置に戻れる。」

「瀬戸先輩……何者ですか!?」


ずっと会話しながら歩いてたのに、先輩はちゃんと段数を数えてたっていうのか。なにそれ凄い。

私が目を丸くしながら瀬戸先輩を見ていると、携帯から『……瀬戸もいたのか』という古橋先輩の声が聞こえた。はい、ずっといましたよ。


「とりあえず、元の位置に戻ろう。」

「はい!」


私は再び瀬戸先輩の後ろを歩き出した。

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