「えっと…。き、昨日はありがとうございました。」

「ああ。」

「……あ、あの!私、みょうじなまえといいます。まこ…花宮真くんとは幼なじみでして。」

「知ってる。」

「そう、ですか。あ、あははー。」

(真くん、ヘルプミー!!!)


真くんに紹介されたバスケ部員の古橋先輩。彼は、霊感があるらしく、もしかしたら昨日のことや、この学校の七不思議について詳しく知っているかもしれない!……というわけで、話を聞くためにこうして、わざわざ会いに来たわけなんだけれど。

なんて言うか……喋りにくい!!

昨日も思ったけれど、古橋先輩は無表情だし愛想もないから、会話にすごく困る。……いや、ちゃんと返事はくれるし良いんだけどね?でも、もうちょっと会話してくれても良いと思うわけだよ。
もしや、人見知りとかコミュ障の人なのかな。親しくなったら、ベラベラ喋り出すとか…?


「いや、誰に対してもこんな感じだ。」

「……私、声に出してました?」

「出してないが、そんな顔をしていた。」


どんな顔ですか!!!と、思わず突っ込みそうになるのをなんとか耐える。ダメだ、このままじゃ先に進めない。私はさっさと本題である昨日のことについて詳しく聞くことにした。


「あの、昨日の……第一体育倉庫の話なんですけど。やっぱり、あれは……。」

「ああ。霧崎第一の七不思議の一つ、『ドリブル音が聞こえる体育倉庫』だ。」

「それ、真くんにも聞きました。出来れば、その七不思議について詳しく教えていただけますか?……昔から私、そういうのに巻き込まれやすい体質で。昨日みたいに何も知らずに、これから生活していくのは危険だと思うんです。」

「できる限り、避けて生活したいというわけか。」

「……はい。」


そうでもしなくちゃ、命がいくつあっても足りないのだ。避けていても巻き込まれてしまうことだってあるのだから。そして、その度に真くんには多大な迷惑をかけてきた。彼のためにも、なるべく自分にできる最低限のことはしたい。


「教えてください。古橋先輩。」

「わかった。」


古橋先輩は、食べ終わった弁当箱の蓋を閉めると、私のいる方に体ごと向けた。彼の何を考えているのかわからない、黒い瞳が私を映す。私がごくり、と唾を飲んだ。


「…霧崎第一の七不思議は、王道なものが多いな。『勝手に楽器が鳴り出す音楽室』『夜に動きだす理科室の人体模型』『図書室にいる美女の亡霊』『無人の放送室から校内放送』『どこかにある異世界へ繋がる鏡』『無限に続く階段』。
それから、昨日の『ドリブル音が聞こえる体育倉庫』。これが俺の知っている七不思議だ。だが、本当は八つあるらしい。」

「あ、わかりました。最後の一つを知るとーってやつですね?」

「ああ。俺も七不思議を全て見たわけではないから確かではないが。こんな情報で大丈夫か?」

「はい!すごく助かりました。ありがとうございます。昼休みにわざわざお時間頂いてしまってすみませんでした!」

「別に構わないが…。また何かあったら来るといい。」


古橋先輩は、そう言って私の頭を優しく撫でる。私は「ありがとうございます」と礼を言って、軽くはにかんだ。古橋先輩に頭を撫でられるのは不思議と嫌ではない。なんか、こう……彼の妹になったような気分だ。間違いない。古橋先輩は絶対に兄ポジションの人だろう。
そんなことを考えていたら予鈴が鳴った。確か次の授業は移動教室だったはず。私は、古橋先輩にもう一度礼を言ってから、急いで教室を出た。走ったらギリギリ間に合うだろうか?



「古橋ー。さっきの子、だれー?」

「花宮の幼なじみだ。」

「へー。花宮に幼なじみいたんだ。ふーん。」

「手は出すなよ。後が怖いぞ。」

「はいはい。わかってるって♪」

「……はあ。」



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