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私には憧れている世界がある。
「美奈子おはよ!ねえねえ、この前の"リボーン"見た?」
「お、おはよ…優花ちゃん。うん、もちろん見たよ。未来編始まったね。」
私には憧れている人がいる。
「まさか、10年後のツナが死んでるなんてビックリしたよね。ああ、これからどうなっちゃうんだろ…続きがすごく気になる!」
「そうだね。土曜日が待ち遠しい。」
私には憧れている生き方がある。
「優花ー。1限目、移動教室だよ。」
「早くしないと置いてくよー!」
「あ、そうだった。待ってー、今行く!じゃあね、美奈子。また後で語ろ!」
「……うん。」
憧れとは、自分にはなれない理想の姿に思い焦がれることだ。ないものばかりの私は、人一倍そういう強い憧れを抱いているけれど、同時に私には絶対に無理だと諦めてもいる。だって、
「……例え死ぬ気で頑張ったって、私じゃ何も変えられないよ。」
『そういうことは、死ぬ気でやってみてから言え。』
「…え?」
移動中。足を滑らして階段から落ちた私は、全身に強い衝撃を受け、そのまま意識を失った。階段から落ちる寸前に、どこか聞き覚えのある声を聞いた気がするけど、あれは誰だったのか。
次に目を覚ましたときには、もうその声を忘れてしまっていた。
プロローグ
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