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「っつーわけで獄寺を納得させるためにも、山本と優花の『入ファミリー試験』をすることにしたぞ。」
「ちょっ、なに勝手に決めてるの!山本も優花ちゃんも私の大切な……と、友達なんだから…!そんな危ないことに巻き込んじゃダメだってば!!」
勝手に学校内のプールに侵入し、トロピカルジュースや浮き輪を持ち込み、バカンス気分を満喫中のリボーンにはあえて突っ込まず、私は『入ファミリー試験』をすることに猛反対した。まさか、山本だけじゃなくて優花ちゃんまで試験があるなんて…。
二人をマフィアとかそういう物騒なことに巻き込みたくない(自分ももちろん関わりたくない)そんな私の考えなんか知らぬ顔で、リボーンは「もう獄寺に二人を呼びに行かせたぞ」と、プールをスイスイ泳ぎながら言った。な、なんて呑気な…!
あの獄寺くんのことだ。いつ憤慨して、ダイナマイトを出すかわからない。冷や汗を浮かべた私は、大慌てで三人の元へと駆け出した。
入ファミリー試験「獄寺くん!山本ー!」
「じゅ、10代目!」
「よお、ミナ。」
良かった。まだ何も起きてないみたい。
獄寺くん達を見つけて、大声で名前を呼ぶと、二人はばっと此方に振り向いた。と、同時に獄寺くんが背後に何かを隠す。……たぶん、ダイナマイトだな。今度、無暗やたらにダイナマイトを使用しないよう注意しとこう。
そんなことを思いながら二人の元へ駆け寄ると、山本が私の足元を見て不思議そうに言った。
「なにそいつ、ミナの弟?」
「へ?」
「ちゃおッス。」
「うわ、リボーン!!」
いつの間に…!と私は顔を強張らせる。どうやら、スケートに乗ったリボーンは、私の腰にロープを巻いて、引っ張られてきたらしい。走っているとき、どうりで重いと思ったら…。
腰に巻かれたロープを必死で解く私を他所に、リボーンは「オレはミナの弟じゃねーぞ」と山本のさっきの発言を訂正した。
「オレはマフィア、ボンゴレファミリーの殺し屋リボーンだ。」
「ちょ、リボーン!」
だから山本にはそういうの言っちゃダメなんだってば!
私は慌てて止めに入ったが、あの山本がそんなリボーンの話を本気で捉えるはずもなく。彼は楽しそうに笑いながら言った。
「ハハハハ。そっか!そりゃ失礼した。こんなちっせーうちから殺し屋たぁ、大変だな。」
「そーでもねーぞ。」
「や、山本…?」
「ん、アレだろ?この前、やってたマフィアごっこ!確かミナがボスなんだっけ?」
「え…。あ、いや……あはは、」
ヒョイっとリボーンを持ち上げ、自分の肩に乗せた山本は、原作通りただのごっこ遊びだとしか思っていないようだ。その天然過ぎる山本の発言に、私はガーンッとショックを受けた。
お母さんといい、山本といい、なんだって私の周りには天然が多いんだろう。そんなんじゃ、すぐ詐欺とかにあっちゃうよ。
それに山本だったら、このまま遊び感覚でリボーン達の変な世界に巻き込まれいって、気づいたらマフィアになってましたーなんて未来、大いにありうる。ここは何としてでも、私が彼を守ってあげないと…!
そう覚悟を決めたとき、遠くから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ちーす。待たせてごめんね!」
「優花ちゃん!」
「来やがったな、このクソアマ!」
「よお。黒川も獄寺に呼ばれたのか?」
制服のスカートをヒラヒラさせながら、此方にやってきた優花ちゃんは「日直の仕事で遅くなっちゃってさ」と申し訳なさそうに言った。なるほど、それでいなかったのか。
私が納得していると、リボーンはぴょんっと山本の肩から飛び降りて言った。
「よし、全員揃ったところで『入ファミリー試験』を始めるぞ。」
「!」
「ん、なんだそれ?」
ニカッと笑みを浮かべたリボーンは、その可愛らしい顔には似合わず、「試験に合格しくちゃファミリーには入れない。ちなみに不合格は死を意味するからな」と悍ましいことを平然と言ってのけた。彼の目は本気だ(私にはなんとなくわかる)。
そんな危険なこと二人にさせられない!と私が止めに入るが、なぜかやる気満々の山本と優花ちゃんに説得させられ、そしてどういうわけか。私までこの『入ファミリー試験』に参加することになった。本当にどうしてこうなった。
目に涙を浮かべ、恐怖に怯える私なんかお構いなしに、武器を取り出したリボーンはそれを此方へ向けて放った。
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