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「ふっふ〜ん♪」
私の名前は黒川優花。13歳。知っての通り、『家庭教師ヒットマンREBORN!』という漫画に登場するヒロイン笹川京子の親友、黒川花に成り代わってしまった女子中学生だ。
どうして黒川花に成り代わってしまったのかはわからないけれど、私は守護者でなければ、ヒットマンですらない、この微妙なポジションを意外と気に入ってたりする。……まあ、ただの一般人として生きていくつもりは更々ないけどね〜。
「お母さん、ちょっと美奈子の家に行ってくるね。」
「あら、そう。それなら、これ持っていきなさい。」
ちょうど買い物から帰ってきたお母さんに、これから出かけることを伝えると、お母さんは持っていたレジ袋からポテチやクッキーの箱を取り出して、私に差し出した。美奈子と一緒に食べなさいってことなんだろう。私はお礼を言って、それらのお菓子を受け取った。
「…あ、それも貰っていい?」
「え?これ?」
「うん。」
そして、ある物も貰った私はそれら全てを鞄に詰め込み、美奈子の家へと向かった。
黒川優花(とランボ)「死にさらせっリボーン!!!」
バキッ
ドガーーーーンッ
「次の問題いくぞ。」
「……な、何もあそこまでしなくても…知り合いなんでしょ?」
手榴弾を跳ね返され、そのまま窓の外へと吹っ飛ばされたランボを、さすがに哀れんだ美奈子は恐る恐るリボーンに口出しした。しかし、リボーンは相変わらずの塩対応で「あんな奴、知らねーぞ。」と見え透いた嘘を吐き出した。
「どっちみち、ボヴィーノファミリーっていったら中小マフィアだ。オレは格下は相手にしねーんだ。」
「か、かっこいいね…。」
最早突っ込む気にもなれず、美奈子は苦笑するしかなかった。
すると、ピンポーンと玄関のチャイム音が家中に鳴り響く。このタイミングで鳴るってことはまたランボかな?と不安げな表情を浮かべた美奈子だったが、その予想は半分外れで半分正解だった。
沢田家のママン、沢田奈々に通されて美奈子の部屋にやってきたのは、彼女の元従姉妹である黒川優花(と、その腕に抱かれた傷だらけのランボ)であった。
「ちーす。勉強捗ってる?」
「優花ちゃん!」
「急にお邪魔しちゃってごめんね。あ、この子、庭の木に引っかかってたんだけど、美奈子の弟?」
「え!?あ…ううん。ち、違うけど。」
「ふーん。」
優花はあまり興味なさそうな反応をし、ランボを床におろした。すると、ランボは先ほどリボーンによって刻まれた恐怖がまだ癒えないのか、すぐさま優花の足にしがみつく。その光景を見て、美奈子は関心したように口を開いた。
「す、すごい。優花ちゃん懐かれてるね。」
「ああ、さっきブドウの飴玉あげたからだね。」
優花は右ポケットから紫色の包み紙で包まれた飴玉を取り出す。そして、何か良からぬことを思いついたのか、彼女はニヤリと悪そうな笑みを浮かべた。
「そうだ。これ、リボーンくんにもあげようか?」
「いらねーぞ。」
「そーお?じゃ、コーヒー味あげるよ。」
ブドウの飴玉を受け取ってもらえなかった優花は、それでも平然とした様子で、今度は左ポケットから茶色い包みの飴玉を取り出した。「リボーンくん、コーヒー好きでしょ?」と、確信を持った様子で差し出してくる優花に、リボーンは少し警戒した声色で言った。
「なんで知ってんだ。」
「ん?なんでリボーンくんがエスプレッソコーヒー好きなのを知っているかって?じゃあ、逆になんでだと思う?」
「……ミナに聞いたのか?」
「ぶっぶー、ハズレ!」
優花が愉し気にそう言うと、リボーンは「さっさと答えを言いやがれ」と彼女に銃を向ける。すると、先ほどまで冷や汗を浮かべながらも黙って傍観していた美奈子が、慌てて間に入った。
「ちょっ待って、リボーンっ!」
「うるせーぞ、ミナ。黙ってろ。」
「で、でも…!」
「あははは!さすが最強の赤ん坊!おっかないわね。」
「優花ちゃん!!!」
ケラケラ笑い出した優花に、美奈子は珍しく目くじらを立てる。こんな発言をして、もし敵だと思われたらどうするのか。下手したら今ここでリボーン殺されちゃうかもしれないのに!
ワナワナと震える美奈子に、さすがにまずいと思ったのか、優花は笑うのをやめた。
そして、優花の発言により殺気を放ち出したリボーンに、先ほどとは打って変わり、困惑の笑みを浮かべながら彼女は言った。
「あー…からかってごめんさいね。改めまして、私は黒川優花。」
「情報屋をやっています。」
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