家庭教師ヒットマンREBORN!! | ナノ

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「おはよ、優花。今日は時間ギリギリね。」

「おはよー、京子。美奈子の小さな家庭教師さんとお喋りしてたら、遅くなっちゃってさ〜。ね、美奈子。」

「へっ?!あ……う、うん…。」


「あ、ミナちゃんもおはよ。」

「お、おはよう…。」



ニコリ、と天使のように可愛らしい笑顔を見せる彼女の名は、笹川京子ちゃん。言わずと知れた並盛中のアイドルであり、この物語の主人公である沢田綱吉の想い人だ。

原作通り、彼女と黒川花に成り代った優花ちゃんは親友同士のようで、学校では一緒にいるところをよく見かける。優花ちゃん曰く『京子と一緒にいるのは楽しいし、何故かとても落ち着く』らしい。


しかし、私はそんな京子ちゃんがちょっと苦手だったりする。



「そう言えば、聞いた?球技大会で卓球男女混合ダブルスに出る予定だった高遠さん、昨日の帰りに事故にあって利き腕を痛めちゃったんだって。」


「え、大丈夫なの?高遠さん。」

「うん。お医者さんに診てもらったら、1週間くらい安静にしてれば問題ないって言われたみたい。……でも、明日の球技大会には流石に出られないみたいで。高遠さんの代わりに誰が出るのか、お昼休みに皆で話し合うそうよ。」

「ふーん…そう。」



優花ちゃんはあまり興味がないのか。適当に相槌を打ちながら、自分の席に腰を下ろした。優花ちゃんは私と違って運動神経良いから、きっとこういうときに助っ人として任されるんだろうなぁ。

そんなことを思いながら私も自分の席に着くと、タイミング良く担任の先生が教室に入ってきて、SHRが始まった。
えっと、今日の1限目は……うわ、英語だ。やだな…今日は指されないと良いけど…。


そのときの私は、笹川京子ちゃんの話をまるで他人事のように考えていた。




山本武




「はい!私やります。」

「あ、ずるい!私もやりたい!」

「ちょっと!私がやるんだからね?!」

「私、結構卓球トクイなのよ!」

「私だって!」



「………な、なに…この競争率。」



ギャーギャー騒ぎ出す女子達を目の前にし、私や男子達はドン引きしていた。



あれから面倒な午前授業を受け終え(英語は指されなかった!)やっと昼休み。お腹ペコペコだった私は、お母さんが作ってくれた弁当をさっそく机に広げ、1人寂しく昼食をとり始めた。……まあ、これはいつものことなんだけど。


いつもと違ったのは、教室にいる生徒の数だ。普段は屋上や中庭で昼食をとったり、食堂や購買を利用する人なんかもいるから、教室にあまり人は残らないんだけど……今日は違った。
京子ちゃんが今朝話していた通り、明日の球技大会で高遠さんの代わりを務める女子生徒を、昼休みの内に決めちゃうらしい。教室には、クラスメート全員が集まっていた。


仕切り役は、体育委員の綾瀬さんと利き腕を痛めたという高遠さんで。二人は教壇に立つと、誰か代わりをやってくれる人はいないか、クラスの女子達に尋ねた。……そして、その結果がこれだ。


女子達の異常な程のやる気に、私は恐れ慄く。そんなに皆、卓球やりたかったのかな…?

そんなことを思っていると、少し離れた席で京子ちゃんと一緒にご飯を食べていた優花ちゃんが「想像通り凄いわねー」と笑顔で言った。



「優花、凄いって何が?」

「もちろん、山本の人気よ!ダブルス組む相手が山本じゃなかったら、こんなに希望者いなかったでしょ。」



………あ、なるほど。高遠さんが組むはずだったダブルスの相手は山本だったのか。だから、こんな女子達がやる気に満ち溢れてるんだね。納得。


熱く繰り広げられる女子達の選手争い(という名の山本ペア争奪戦)に、痺れを切らした綾瀬さんはバンッと黒板を手で叩いた。皆の視線が彼女に集まる。

綾瀬さんは、目くじらを立てながら口を開いた。



「相手が山本くんだからやるって言うのはなしよ!こっちは真剣に優勝狙ってんだから。そういう下心見え見えの女子には任せられない!」

「…そ、そんな下心なんて!」


「じゃあ、聞くけど。山本くんじゃなくて、田沼とかが相手でもやる気ある?」

「「「「………。」」」」



綾瀬さんにそう尋ねられ、女子達は黙り込む。フツメン代表として例に挙げられた田沼くんは「山本と比べないでくれ!」と涙声で訴えていた。かわいそうに。



「…でも、これじゃ全然決まんないわね。」

「ねえ、山本は誰と組みたいとかないの?」


「え、俺?」

「そうだよ。山本が決めたら良いじゃん。女子達もそれなら文句無いだろ。」

「……そうね。武が決めるなら。」



女子達も、それなら…と納得したようで。皆の視線が今度は山本へと集中する。私も唐揚げをもぐもぐ食べながら、彼へと視線を投げた。

山本は一体、誰を選ぶんだろう。並中のマドンナ、京子ちゃん?それとも運動神経のいい優花ちゃんとか?

クラスメート(特に女子)から期待の眼差しを向けられた山本は「んー。そうだなぁ…」と教室中を見渡した。……そして、


パチッ

視線が重なった。


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