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「…えっと……な、なんの用、ですか。ごご、獄寺くん…。」
放課後の校舎裏で、あの獄寺くんと二人っきり。獄寺ファンならきっとこんなシチュエーション、泣いて喜ぶだろうけど…。今、私が目に涙が浮かべているのは別に嬉しいからじゃない。
怖いからだ。
「お前みたいなカスを10代目にしちまったら、ボンゴレファミリーは終わりだ。」
「そ…そんなこと、言われても…。」
「目障りだ、ここで果てろ。」
「ヒィッ、」
(やっぱ、獄寺くん怖いよおおおおおお)
どこからかダイナマイトを取り出した獄寺くんに、私は情けない声をあげる。優花ちゃん助けて!リボーン早く来て!!!
そんな心の叫びが伝わったのか。「ちゃおッス。思ったより早かったな、獄寺隼人」というリボーンの声が上から聞こえてきた。と、同時に頭へ走る衝撃。……どうやら、私の頭はリボーンの着地点にされたらしい。ちょっと重たいけど、そんなこと今は気にしない!
リボーンが来たことに少しだけ安堵した私は、手で涙を拭いながらリボーンに尋ねた。
「……ご、獄寺くんとリボーンは知り合いなの?」
「ああ。俺がイタリアから呼んだファミリーの一員だ。俺も会うのは初めてだけどな。」
(そ、それって、知り合いっていうのかな…?)
私が困惑した表情を浮かべていると、空気を読んだのか。先程まで黙っていた獄寺くんが口を開いた。
「あんたが9代目が最も信頼するヒットマン、リボーンか。噂は聞いてるぜ。こいつを殺れば、俺が10代目内定っていうのは本当だろうな?」
「ああ。本当だぞ。」
「っ、ええ?!」
聞こえてきた物騒な話と、それをしれっとした顔で承認するリボーンに、私は慌てて口を挟んだ。この展開はなんとなく覚えていたけど、やっぱり私みたいなダメミナが獄寺くんに勝てるわけない!
「ちょ、ちょっと待ってよリボーン!私を10代目にするって言ったのは嘘だったの?!」
助けを求めるようにリボーンを見ると、彼は私の頭の上から飛び降りて、ニヤリと笑った。
「殺られたくなかったら戦え。」
「無理!絶対に無理だよ!!!」
私はそう言って、すぐさま駆け出した。こんなところにいたら、本当に殺されてしまうと思ったから。
みんなからダメミナと呼ばれている私だけど、逃げ足が速いことだけは自慢できる唯一の特技だった。(それが特技なのかっていうツッコミは受け付けません!)
しかし、
ドッカーン!!!
「ぎゃーーっ?!」
「待ちな。」
そう簡単に逃がしてはくれない獄寺くんこと、人間爆撃機。またの名をスモーキン・ボム隼人。本当にどこに隠し持っているのか。彼はまるで手品のようにダイナマイトを次々と投げてくる。もう辺りは穴だらけだ。
(やばい!このままじゃ、本当に死んじゃう!!!!)
「次でトドメだ。」
「ヒッ?!やっ、た、タイムっ!待って!!!」
必死で逃げてきたけれど、どうしよう行き止まりだ。背後には校舎。目の前にはダイナマイトを両手に装備した獄寺くん。もう逃げ場がない!私はギュッと目を瞑る。
そんなとき、聞こえてきたのは絶体絶命なこの状況に似合わない呑気そうな声だった。
「おーい。沢田、こんなところで何やってんだ?」
「えっ、な…山本?!」
(なんで此処に!?)
「ジ・エンド・オブ10代目、」
「っ!!!」
「?」
「果てろ!!!」
何も知らずに此方へとやってくる山本。遠慮無くダイナマイトを投げ飛ばす獄寺くん。すべてがスローモーションのように見えた。ああ、私は一体どうすれば…!このままダイナマイトが爆発したら、私も山本も死んじゃうかもしれない!!!
そんなとき、視界の隅に写りこんだ黒スーツの赤ん坊は、此方に銃を向けて言った。
「死ぬ気で戦え。」
「っ、」
辺りに鳴り響く銃声。
そして、私は後悔した。死ぬ気になれば、ダイナマイトの火を消せたかもしれないのに、と……
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