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「ちゃおッス」
つ、ついに来ちゃった……
「お前がミナだな。今日から俺が面倒を見てやるぞ。」
「………ど、どちら様ですか…?」
「俺は家庭教師ヒットマン、リボーン。」
目の前にいる赤ん坊は、ニヒルな笑みを浮かべながらそう名乗った。そのただならぬオーラに、私はゴクリと唾を呑み込む。
まさか、登校中に出くわしちゃうなんて……!家じゃないからって完全に油断してたよ。どうしよおおお…!
「俺はボンゴレファミリーのボス、ボンゴレ9世の依頼で、お前を立派なマフィアのボスに教育するためにやってきたんだ。」
「……あ、あはは。えっと、ボクはどこの子かな?」
「ママンからの許可はもう貰ってるぞ。安心しろ。俺が24時間みっちり面倒見てやる。」
全然安心できない!!!
ていうか、話を聞いてくれない!!!
非情にマイペースな赤ん坊に振り回され、一体どうしたら良いかと困っていたとき、「あれ、美奈子ー?」と後ろから救いの声が聞こえてきた。
バッと振り返れば、そこには予想通り優花ちゃんが立っていて、彼女は私とリボーンを交互に見てから首を横に傾げた。
「え、美奈子って弟いたっけ?」
「へっ?!……あ、ううん。私の弟じゃないよ。」
「俺の名はリボーン。ミナの家庭教師だぞ。」
「美奈子の?へえ、そっかー。リボーンくんはすごいんだね!私は黒川優花。美奈子のクラスメートよ。よろしくね。」
「ああ。」
すごい…優花ちゃんは女優になれちゃうと思う。リボーンを見ても全く動じず、すごく自然に会話してる!
私が優花ちゃんに尊敬の眼差しを向けていると、彼女は私の方を振り返り「やばっ!急がないと遅刻するよ」と言った。確かに、今から走らなければ遅刻ギリギリの時間だろう。
優花ちゃんは私の腕を引っ張ると、そのまま学校の方向へと駆け出した。
「じゃあね、リボーンくん!また今度ー。」
無邪気に手を振る優花ちゃん。完璧だ。
後ろを振り返り、リボーンが追ってきてないことを確認した私は、ホッと胸を撫で下ろす。そして、走り続けながらも優花ちゃんにお礼の言葉を口にした。
「あ、ありがとう優花ちゃん。助けてくれて…。」
「ふふ、フォローするって約束したしね〜。リボーンが来たってことは、ついに原作が始まったわけか…。これから忙しくなりそうね!」
楽しげにそう言った優花ちゃんに、私は溜息をこぼす。私も彼女みたいに、この状況を楽しめたら……なんて、主人公に成り代わってしまった時点で無理な話なんだけれど。
とにかく此方の世界では少しでも長生きしたいし、マフィアのボスなんかに絶対ならないぞ!と私は決意を固めた。……とりあえず、リボーンの死ぬ気弾には気をつけようと思う。
リボーン
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