めくるめく


思い切って服を掴むと、それはそれは慎重にめくり上げた。

自分の心臓の音が、小さなライブ会場のドラムかのように響き渡る。
無意識に震える腕は、止めようにも言うことを聞かず小刻みに震えるままだった。


「ん……」


小さく吐息を漏らした木下が、眉を引き攣らせて布団に丸まる。


慎重に、慎重に。


まず背中を、その次に腹を、腕をと順々に見ていくと、どこも出来たての痣は見当たらなかった。



ーー良かった。


そう胸を撫で下ろすと、ぐるりと寝返りを打った彼がこちらを向いて俺の腕を掴んだ。


「っ……!」


どうにか離れようにも、握られた腕が解けない。

バレてしまったのだろうか。


触れている腕が木下の体温と混じり、微熱を帯びた。


「木下、あの、腕を」


「ーーさき、さ」


「え?」




「三崎さん」



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