めくるめく


彼が寝ているうちに確認してしまおうと、思い立ったら唐突。
風呂から上がった木下を酒に付き合わせ、ほどよく酔ってきた頃にベッドへ誘導した。

ものの五分とちょっとで寝息を立てはじめた彼を警戒するように見つめると、俺はしばらくしたら行動に出た。


伸ばされた手が震える。


「……ッ」


唾を飲む微かな音さえ気持ち悪いほど静寂の中では響き、今すぐにでも彼が起きてしまうのではないかとあと一歩が踏み出せなかった。


大丈夫。

もしも見つかってしまったら、素直に言おう。そしたらきっと、木下も分かってくれる。

それでも軽蔑されたら哀れな目で見つめよう。俺は愛する人から暴力を振るわれている、可哀想なコイツを心配してやっているんだ。

なにも悪くない。


間違ってない。



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