めくるめく


あの日突然の再会を果たした木下裕也との生活を続けて、約二ヶ月が過ぎた。


男一人だけの暮らしから、仮にも初恋の相手との同居生活は自然と慣れ、今ではそれぞれの役割もできた。

食事全般は木下が担当し、俺はその間に掃除。洗濯は二人が風呂から上がったら一緒にやるという、約束も何もしていないのに決められた暗黙のルール。
掃除は辛うじてできていても料理が全くできない俺は、それはそれは助かっていた。



「そういえば、日曜ってバイト入ってたか?」


今夜も上司から降り注ぐ理不尽な怒りに耐えながら過ごしていただけあって、木下の作る親子丼が高級料理のように輝いて見える。


「いや、日曜はないよ。どうかした?会議?」

「そうじゃなくて……」


お互い何も言わないのに、気付いてくることもある。
木下は意外と真面目で、健康を考えて薄味料理を出してくるが、俺は濃い方が好きだ。

夕食の親子丼も、醤油がしっかりきいていて俺好みの味になっていた。


「出かけないか?場所は決まってないけど、適当にぷらぷら歩いてさ」

「えっ」


驚いて目を丸くした木下の表情に驚いた。

そんなにもびっくりすることか?


「あ、悪い……予定があるなら別にいいんだ。俺もゆっくり過ごすし、」

「ない!!……ない、よ。出かけたい」


この男が今までどのような生活をおくっていたかは、正直全く知らない。
聞こうとはしないし、そもそも聞く勇気がないからだ。

でも、恋人がいたなら、出かけたりするくらいあったんじゃあないのかーー。


「ねえ、俺が決めてもいい?」

「ああ、いいよ」

「どこにしよっかなあ……へへ、楽しみだな」

「……」



なあ、木下。

お前にとって“恋人”は、どんな存在だった?



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