雨の止む日


彼と会わないで約一週間が過ぎた六月の中旬。あれから雨も降ることはなく、夏に近付く晴天がずっと顔を出している。





「涼太、これからカラオケ行くんだけどお前も来るか?」

「カラオケかあ、久しぶりだね。行こうかな」


あの日はろくに口も開かず、結局は互いに遠慮をしながら雨が止むのを待っていただけだ。
でもひとつだけ知ったことがある。電話越しに話す誰かとの会話で、絵画がどうこうと言っていたから、たぶん彼は画家か何かなのだろう。でもそれも、俺の勝手な予想。


「おい涼太、なにしてんだよ。置いていくぞ」

「ごめん、今行くよ」


俺はそう返事をして足早に校門を出た。雨なんて一粒も降らなさそうな、真っ青な空だった。

あの日に食べた、歪な形をした具が入ったカレーライスの味が忘れられず、まだ口の中に残りつつある。本当に美味しかったなあ、なんて考えていると、よだれが出そうになって口を塞いだ。



「そういえば涼太、雪菜ちゃんとはどうなったんだよ」

「え?」

「ほら、この前みんなで遊んだだろ。その時に良い感じになってた、南高校の子」

「ああ……」


確か一昨日の放課後、今日みたいに誘われて流行りの映画を見に行った。そこで知り合った他校の可愛らしい女の子。

そんなこともあったなあ、と頭の中で思いながら軽く返事をした。


「別に何もなかったよ」


もともとその日は予定がなかったので気まぐれで参加しただけだった。連絡先も交換していないし会話だって、うん、とか、そうだね、などと単語のみの素っ気ないものだった。
先に続くものなんて、何もない。


「やっぱりな。涼太っていつも女の子に興味なさそうだもん。そんなんだから前の子ともすぐ別れちまうんだよ」


図星を付かれて顔を歪めながらも、「女好きの真守には言われたくない」と小声で反抗した。


「そんなこと言っていいのかなー?涼太くん」


横目で見てにやにやと笑われた。この顔は、絶対に何か企んでる顔だ。


「なんだよ」

「実は今日、男女混合でカラオケなんだよ」


思いきり眉間にシワを寄せながら、目で嫌だとアピールをしても真守が察してくれるわけもない。


「男は中村と熊谷が来るからさ。女子はなんと、南高校!」

「またかよ」


大きな溜息を付いて頭をかく俺に、彼はまあまあ、と肩を叩いて励ます。


「実は雪菜ちゃんがまた涼太に会いたいって言ってるんだよ。会ってやってくれよ」

「そんなの悪いよ。俺はその気はないのに」

「大丈夫だって、雪菜ちゃんも承知の上だろうしさ。それに、可愛い子も連れてきてくれるって言ってるから」

「やっぱりそれが狙いか」


結局は自分のためかよと呆れながらも、真守の素直な性格は嫌いになれない。悩んでいるとき、その素直さに気付かされることも多々あるからだ。

「とにかく今日は、せっかくだから楽しむよ」と微苦笑しながら返すと、彼も笑った。



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