初恋のきみ
決してピッタリではない俺の服を着た木下が、居心地悪そうに水の入ったグラスを握って俯く。
大きめの服は、腕や足首を隠す代わりに細い肩を露出した。
「……木下、」
沈黙が辛くて口を開くと、微かに俺と目を合わせて情けなく笑った。
その優しさが苦しい。
腕や足は大丈夫なのか?
どこか痛いところはないのか?
何か欲しいものは?
お前はその生活で、笑っていられるのか?
聞きたいことは山ほどあったけれど、そのどれもが今の木下には無意味なのだと分かっていた。
「……もう寝ようか。木下は俺のベッドで寝ていいよ。俺は明日も早いから、ソファーで寝る」
「でもっ、」
「いいから」
「……うん。ありがとう」
ーーきっとあの傷は、今の恋人とやらに付けられたものだろう。
お前が自分を犠牲にしてまで愛していたい相手は、そんなにも最低で傲慢な奴だったなんて。
「俺はどうしたら良いんだよ……っ」
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