雨が止んだなら


それから三駅乗ったところで俺たちは降りた。三時過ぎから出発したので着いたのは五時少し手前。
先に近くのファミレスで食事を済ませ、友人や南高校の子達に連絡をとり浜辺でかき氷を食べながら待った。



みんなが揃った頃にはすっかり日も暮れ、コンビニで花火セットを二つ買って火を付ける。
漆黒の中で波の音を消すようにしてバチバチと花火が音を立て出した。



「これやると夏って感じだよなー」


隣の真守が花火の光に当てられながら楽しそうに笑った。


「これからは花火大会も多くなるしね」

海のすぐ近くでは中村とその彼女が盛り上がって話していた。熊谷は相変わらずぶっきらぼうに黙ったままだが、顔もスタイルも良いので今日もまた女子に囲まれている。
宮崎さんは軽く挨拶をしてからはそれきりだけれど、チラチラと視線は感じていた。無理はない。あれから俺と桑原さんがどうなったのか、気になるのだろう。



「真守、女の子たちと話さなくていいの?新しい子来てるじゃん」

「雪菜ちゃんと気まずいのにお前を一人にしちゃ駄目だろ。それとも何?雪菜ちゃんと話したい?」


ニヤニヤと笑いながらからかってくる彼に、そんなんじゃない、と返しながらも有難く思う。
真守は凄く友達思いでイイヤツだ。


「ありがとう、真守。……俺も怖いのかなあ」


え?というように真守が横目で見た。


「本気で好きになるのが怖い。傷付くのが嫌……でしょう?」

「だから付き合わなかったのか」


真守が小さく笑った。
花火が光を失い、また一つとってシュッという音を立てながら辺りが明るくなる。


「もうとっくのとうに本気なんだけどなあ」


ガクン、と頭を下げてぼそぼそ言うと、「もう傷付いたしな」とトドメを刺された。二人して馬鹿みたいに笑う。


「涼太らしくねえよ。俺みたいな恋愛の仕方、好きじゃないんだろ?」

「批判されてる自覚はあるんだ」

「そんな簡単に変われねえし」


不機嫌に口をへの字にさせている真守と並んで石段に座っていると、砂を蹴る足音が聞こえた。


「涼太くん……少し、話いい?」

「え……あ、うん」

「じゃあ俺あっち行ってくる」


気遣って立ち上がる真守に「待って」と腕を掴む。


「宮崎さん、真守も一緒にいいかな」

「えっ。私はいいけど……」

「じゃあ真守も聞いて」

「おいおい、いいのかよ」


話の内容は分かってる。きっと彼女はあの日、コンビニでのことを、その後を、聞きたいのだろう。


「……真守にも、聞いて欲しいんだ」




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