雨が止んだ日


ーーそれから食べ終わっても暫らくその場でのんびりとしていた。もうそろそろ行く?と声をかけられて頷くと、お手洗いに行くから支度をしておいてとのこと。驚いたのは、待っている間に彼が会計を済ませてしまっていたこと。



「桑原さん、俺お金持ってたのに」


店を出ても申し訳ない気持ちでいっぱいで感謝もろくに言えずにうじうじとしていると、ごめん、と笑われた。


「大人ってずるい。そんなことさらっとやっちゃうんだ」

「私もやってみたかったんだよ。さらっと」


わざとらしく子供みたいに笑うから、俺もつられて笑った。


「……ありがとうございます。美味しかったです」

「よかった」

「でもどうして急にパスタだったんですか?勝手なイメージですけど、桑原さんって和食かカレーだと思ってました」

「カレーライスは私も仕方なくだよ、あれしか作れないから。……パスタは食べたくなったんだ。でもやっぱり違うね」

「美味しくなかったんですか」

「美味しかったよ。でも涼太くんが作ってくれた方が美味しい」

「っ……」



間違えた。ずるいのは大人じゃなくて桑原さんだ。




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