雨が止んだその日


初恋は小学三年生の頃だった。

背の順が一番前の、可愛らしい同じクラスの女の子。好きな人ができても話しかけられないでいる俺は、中学一年生のときの二度目の恋も呆気なく終わった。

高校に入学すると全く新しい環境に変わり、真守と出会って少しだけ性格が歪んだ。好きでもない女の子と、一年生のときの夏と冬、二ヶ月ほど付き合った。そんな残酷な恋はやはり長く続かなかったし、なんだか良い気もしなかったからもうそんなことはしない。
二年生の文化祭がはじまる三日前、一つ上の先輩から告白された。話していくうちに好きになり付き合ったが、先輩が卒業したと同時に別れた。

三年生に進学したらもう恋愛感情というよりは友情関係が多く、色気のない日々を過ごしていくうちに桑原さんと知り合った。




もちろん男を好きになったのは、これが初めてだ。








「あれからどうよ」


朝の挨拶もなしに真守は第一声を俺に向けて前の席に座る。
俺の前は口数の少ない隅木くんの席。休み時間もひとりでいるような、いわゆる地味な男だ。そろそろ隅木くんが俯きながら教室に来る時間帯だから、真守がそこにいたら座れないだろうなあ、なんて考えながら。


「なにが?」

「雪菜ちゃんだよ!先週の合コンで、二人で帰してあげただろ。あれから進展はあったのかよ」

「ないよ、普通に帰ったし。それに合コンじゃなくてカラオケ」

「人の親切を無駄にしやがったな」


余計なお世話だと睨みつけると、あー怖い怖い、と軽くかわされた。


「まだ時間はあったんだから、ホテルにでも行けばよかっただろ」


真守のそういう性格が、俺とは合わない。
俺が女だったら真守とは付き合わないだろうな。


「俺は人に酔ったからそんな気力はなかったよ」

「むかつくー」


どっちがだ。


「真守は可愛い子見つけられた?」

「あんまりいなかった。あ、中村は付き合ったらしいよ。一緒に話してた美来ちゃんと」

「え、そうなんだ」


あの中村が……なんて思うのは失礼か。


「中村はいい奴だし、幸せになれてよかったよ」

「なんだよ俺はいい奴じゃないみたいな言い方」

「だってそうだろ」

「お前も同類だこんちくしょー!」


髪をわしゃわしゃと掻き回す真守に、笑いながら抵抗しているとチャイムが鳴った。迷惑そうに見つめながら端にいた隅木くんは、真守が退いたと同時に席についた。



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