「ほんとにいいの?」
「…うるせーな」
そう言って俺は女の口をふさいだ。あいつと違ってごちゃごちゃと喋るのが妙にいらいらしたから。あいつなら絶対にキスする前は喋らない。した後、必ず顔を赤らめて、恥ずかしがるんだ。
「シリ、ウス…?」
そう声が聞こえたのはさっきまでキスしてた女がいなくなった後だった。明らかに動揺した様子で。全部見てたんだろ、さっきまでの出来事、ぜんぶ。
「なんで、浮気なんか」
「…なんでだろうな」
溜まった涙できらきらした青い目が俺を真っ直ぐ捉えていて、信じられない、という気持ちが痛いほどに伝わってきた。
「嫌いに、なった?」
そんな事あるわけないのに、俺がお前を嫌いになるわけないだろ。俺を見つめる青い目も、きれいなダークブロンドの髪も、ただひたすら愛しい気持ちをくれるお前を離すつもりなんてない。
「ねえ、シリウス…」
「…うん」
こんなにお前を思ってるのに、ちゃんと気持ちを伝えられない自分が歯がゆくて。繰り返し浮気なんていう最低な行為をして君からの涙を期待してしまった。そうすれば君はその時、俺だけを考えてくれるだろ?
「なあ…俺、」
「…分かってるよ」
もう一度、分かってると呟いた彼女はゆっくりと涙をふいて俺の顔を見た。ぎゅっ、と手を握ったら暖かい温度があって、それだけで心が満たされる。このまま手を通して、愛しいという気持ちが伝わればいいのに。
「私、シリウスのこと、大好きだもん。全部…分かってるよ」
なぜかその一言に、救われた気がした。
「俺も…好きだ」
絶対に言葉には出来ないと思っていた事が余りにもあっさりと出てきて、言ったあとに自分で驚いた。素直じゃない自分をこんなにも思ってくれるのはこいつだけだと思う。
そんな俺を見て小さく彼女は笑ってまた一つ、愛しい気持ちをくれた。
それは密やかな幸せ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
二万打リクエスト!
みかぜさま
リクありがとうございました。ご期待のものになったかどうかは、かなり怪しいところではございますが…気に入っていただけると幸せです!
今後もbe stuck onよろしくお願いいたします。
エコ