ゆっくり溶ける二つ
口付けされた唇はまだ熱を持っていて、何回も擦ったせいで赤くなっていた。思い出すたびに、あいつの顔が出てきて、ただ、涙が止まらなくて。
なんで、なんで、なんで。こんなことしたの。いつもみたいにバカにしてきて、いつもみたいに喧嘩してた方が良かった。込み上げてくる嗚咽は止まることがなく今も続いている。
「幸村、さま…」
そう呟いた声は誰に聞かせるものでもなかったはずなのに、頭に少しの重みと私の名前を呼ぶ優しい声。それは、一番望んでいた、声で。
「幸村さま、」
「大丈夫でござるか?」
ダメだ、優しすぎる。幸村さまの声が、優しすぎる。今のわたしを泣かせるには充分すぎた。
「泣いておられたのか、」
涙を拭ってくれる幸村さまはその言葉と同時に、少しだけ顔を歪ませて聞いてきた。さっきいきなり出ていった事を怒ってないのかな?幸村さまは優しいから、怒っていても言わなさそうだけど。
「怒っているでござる」
「え、?」
まさか言葉に出ていたなんて思いもしなくて、目の前にはさっきとはまったく違う幸村さまの顔。すこし怒った幸村さま、
「某は、あなたと一緒に甘味を食べたかったのに」
「かん、み?」
「あなたは出ていってしまったから」
「…すみません、」
「ましてや…佐助に、接吻なんて」
「ごめんなさい…って、せ、っぷん」
「したので、あろう?」
さっきまで歪ませていた顔がもっと苦々しい顔になっていた。わたしの顔は真っ赤になっていて口をパクパクさせてしまって。な、なんで?なんで幸村さまが、
「この唇にされたのでござるか」
「あ、の幸村さま」
「熱い」
まだ熱をもった唇に触れた幸村さまの指は異常に冷たくてびくっ、と体を震わした。
「幸村さま、あの、わたし」
「某は、あなたが、すきでござる」
そう言って塞がれた唇は猿飛佐助に残された熱のせいなのか幸村さまが触れた熱のせいなのか、
溶け出してしまうくらい、熱かった。
ゆっくり溶ける二つ
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いろいろされすぎなヒロインちゃん←
うわお、
エコ 091204