初めての君が


ありえない、ありえない、ありえないって!昨日まで普通の町娘だったんだから!そう思いながらも足はこの甲斐を統べている領主がいる城に向かっている。

普通の団子屋の娘が城のに行くなんてたぶん一生に一度もないことだろう。だって行く必要がないから!それもこれも、ぜーんぶ!うちの団子屋の常連だった猿飛佐助のせいなのよ!ばか!


「あのさ、城で女中、したいよね。あー、やっぱしたいか!そう言うと思った!よし、明日きてね!」


この一言で私の人生がすべてめちゃくちゃになっていった。く、くそう…断れるわけないじゃない!断ったときには、あのクナイで殺されるんだろう。それだけは、やだ。


そんな事を思っているうちにもう城の前まで来ていて、門番さんが何か気付いたような顔で中に通してくれた。…なんか、にやにやしてるけど。ここの城の人は、あれか。全員気分を悪くさせる天才なのか。


「あー!来てくれたんだ!逃げるかと思ったけど、ちゃんと来たんだねー」


…あの憎い猿飛佐助がどこからともなく現れて胡散臭い笑顔で言ってきた。あああー!イライラする!この人を信じてなさそうな笑顔!はらたつ!こんなに心が冷えてる人、初めてみた!


「あれ、あれあれ?ご機嫌ななめ?」
「…理由も聞かされずに、ここに来ましたから」
「えー、だって聞かなかったじゃん」
「…言わなかったんでしょ、」
「聞こえなーい」


ニコニコと笑う笑顔にまだ腹立ってずっと無視していたけど、いきなり開いた襖にびっくりして目を丸くしてしまった。


「佐助!」
「あれ、旦那」


入ってきたのは、いつも猿飛佐助が旦那のためにと言ってお団子を買っていってあげている人だろう。う、わ…どうしよう、なんでこんなに胸がドキドキいってるんだろう。初めてあったのに、なんでかな…


「お、おお!あなたが佐助が連れてきた新しい女中殿か!」
「…」
「おーい、大丈夫ー?」
「へっ!あ、はい!」
「某は真田幸村、これからよろしく頼むでござる」
「…はい」


幸村さまの笑顔に胸が高鳴ってなぜか無性にドキドキしたけどそれが何なのかはまったく分からない。…だからその横で、あの猿飛佐助にあの張り付いた笑顔が無くなっていたなんて気付きもしなかった。


初めての君が



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まったくオチが決まってない無謀拍手連載!
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090801 エコ