フロックス



「え…今日レギュラス、さんいないんですか?」

「はい、生憎今日は急にパーティーが入りまして…。どうしても外せない用だと、」

「そう、なんですか」


こちらをちらりと一度見ただけですぐさま自分の持ち場へと行ってしまったメイドを横目に、一度小さなため息をついた。もう部屋まで来ちゃったんだけど…レギュラスがいないのなら、自分が来た意味がない。今日は、帰ろうかな…そう思い部屋を出ていこうとした。


「うわっ、」


その瞬間、開いていた窓から強い風が吹いた。たくさん積み上げられていた難しそうな資料が目の前を舞っていて、急いで窓を閉めようとした。その時、一枚の紙が外に飛びそうになり、手を伸ばす。


「バラバラになっちゃったよ…」


床に散らばった紙を拾おうとして、手にしていた紙をふと、見てしまった。…見なければ、よかった。見たく、なかった。


「なに、これ…」


…ローズ・キャンティ身辺調査書。そう大きく書かれた題に私の身の回りの事柄がたくさん書かれている。キャンティ家の家系図、私の成績、誰と交遊関係があるか、…私が誰を、好きなのか。私しか知らないような秘密まで…書いてある。最後には、レギュラスの確認のサインが、のっていた。


「あり得ない、よ」


気が遠くなりそうな程の出来事に足が動かなかったけど、廊下で少し足音がして震える体に力を入れて部屋を出ていった。誰の足音かは分からなかったけど今はそんなこと考えていられなかった。



ローズが出ていった部屋には、人影が一人。



「レギュ…あいつ、」



それはローズの調査書をぐちゃぐちゃに握りしめた、シリウスだった。



Phlox



(もう、何も)(考えたくないの)

(花言葉:一致)