「ローズさんは本当にに白が似合いますね」
婚約した日から一緒にすごすことが多くなったレギュラスから言われた言葉に、赤くなった顔を冷ますのが大変だった。着ている白いワンピースにレギュラスはさらっと恥ずかしい言葉を吐いて、私を戸惑わす。
「そっ、そんなことないです!わたしなんか…」
そういうとレギュラスはいつも決まって人差し指を私の唇にあてて「女性ならば素直に受け取っておくべきです、」と言う。
だけど、なぜかまだ私達は敬語を使っていて、一向に距離が縮まる気がしないのだが。今日だって二人でブラック家の豪華な庭のベンチに座っているが、私達の間にはかなりの距離がある。
「突然の婚約に戸惑っていらっしゃると思いますが、あの婚約…実は僕が頼んだんです。」
「え…、」
初耳だった。まさかレギュラスが頼んでるなんて、どうせ親が決めた婚約だと思ってたから…。
「本当にすみません…」
申し訳なさそうに、そういうものだからこっちまで申し訳なくなってしまった。でも…なんで私なんだろう?ブラック家にあう身分の人たちならもっといるはずだ。
「なんで?…って顔ですね。まあ、確かに寮は同じですがあまり接点はありませんでしたし」
…顔にでてたかな、
「ちょっと驚かせたかった、じゃダメですかね?」
意外にもお茶目な返答に目をぱちくりさせているとレギュラスがふっ、と笑っていた。その顔があまりに切なくて、まるで周りの景色が全部色をなくしたかのように冷たかった。
「ただ…誰にも渡したくなかったんですよ。僕、負けず嫌いなんで、ね」
そしてレギュラスは私の腕をいきなりひっぱってそのまま抱き締めてそう耳元でささやいた。
まさか、
まさか、レギュラスの目線の先にあの人、シリウスがいたなんてまったく私には知る由もなかったんだ。ただ感じたのは、紛れもないレギュラスの腕の力強さと息づかいだけで。人の温もりを感じて、抱き締められたことに驚いていた。
歯車は軋みながら回り始めた。誰一人として、幸せになれない、歯車が。
Rosemary(抱き締める強さは)(気持ちの強さ)
(花言葉:静かな力強さ)