ふくろう便



いよいよ初授業、私たちにとっての初授業は魔法薬学だった。昨日の夜からリリーは意気込んでてシリウスとのおしゃべりを中断させられ早々と女子寮に上がったのだ。

…まだ、話してたかったな。

そんなことをポツリと思いながら上がる前に頭を撫でられた感触を思い出していく。

そして就寝時間ピッタリに寝た私たちは翌日早くに起きることが出来た。

「おはよう、リリー」

そういってベットから降りながらもう準備が出来ているリリーに声をかけた。

「おはよう、ティアラ!よく眠れた?」

にっこりと笑うリリーに安心感を覚えてゆっくり頷いた。

けれど…
本当は眠れなかった。

昔から安心して眠れた事なんかなかった。目を閉じれば浮かんでくるのは親の冷たい目、親戚の罵倒、そればっかりで。

いつか暗闇に飲み込まれて出られなくなっちゃうんじゃないか、といつも不安になる。そんな事を考えているとリリーに声をかけられ我にかえった。

「ティアラ?顔色が悪いようだけど…大丈夫?」

リリーには心配かけちゃダメだと思い笑顔を返し制服とローブを着た。

始まるんだ、これから

自分の新たな一歩に少しの期待と不安を抱きながら寮の階段をおりた。女子寮の階段を降りると談話室にはシリウスたちがいておはようと声をかけられた。

「おはよう、みんな」

さっきまでの不安がどこかへいって心が穏やかになれた。

「ああ!おはようリリー!今日も可愛いよ!」

朝から熱烈なアピールをしているジェームズにリリーは心底嫌そうな顔をしていた。

「よく眠れたか?」

頭をポンポンと撫でながらシリウスが話しかけてきた。

「うん…すごく、」

不安な顔は見せまいと必死に笑顔を作ってごまかそうとした。

「…」

シリウスは穏やかな笑顔から真剣な顔になり頭を撫でていた手をゆっくり後頭部に回した。

私が困った顔をするとそのままぐいっとシリウスの胸のなかに引っ張られて。皆が見ているという羞恥心からあたふたしているとシリウスは背中をゆっくりと叩いてくれた。

「安心したか?」

とくん、とくんというシリウスの心地よい心臓の音を聞きながら心を落ち着けた。

「心配しなくても、お前は絶対守るから」

その力強い言葉に涙がでてきてシリウスの制服を濡らしてしまった。

「さ、朝飯食いにいこうぜ!」

皆、訳が分からないという顔をしていたがその言葉に皆は談話室をでて大広間へいった。