瞳に光を宿したら




長い長い、私にとっては本当に長かった休暇がもう後1日で終わろうとしていた。思い返せば、いろんな大事件が起こったような。こんなことならリリーのお家に無理を言ってでも行かせて貰うべきだったのか…なんて今考えても仕方ないことで。今ある現実は変えられないから。


「…だめだ、強くならなきゃ」


ぽつり、と一人部屋で呟いた言葉が宙に消えていったとき勢いよく部屋の扉が開いた。


「っお嬢様…!」
「…エド?慌ててどうしたの?」


いつもなら絶対になにがあっても取り乱すことのないエドがノックも無しに部屋に入ってくるなんて…。相当大変なことがあったのかもしれない、なんて他人事のようにぼんやり思っていたのも束の間だった。


「、これを…。今朝旦那様の暖炉の所で見つけて…」


そういってエドが差し出してきたのは大量の紙の束。そこには私にとって見慣れた字がたくさん書かれていた。


「これ…手、紙?」
「…旦那様が他の使用人に指示してお嬢様にご友人からの手紙が届かないように細工していたそうです、」
「…リリー、リーマス、ピーター、ジェームズ…シリ、ウス」
「申し訳ありません…!私がもっと気をつけていれば…」


皆からの大量の手紙。休暇中、こんなにたくさん手紙を書いてくれていたなんて…。一通も返していなかった私に何通も送ってくれた皆の優しさに心がぎゅ、っと痛くなった。リリーなんて休暇が始まってから毎日手紙をくれている。大量の手紙を胸に抱えて抱きしめてみると、そこから皆の優しさがいっぱい伝わってくるようだった。


「お父様は…燃やすつもりだったのかしら、」
「恐らく…他の使用人に事情を聞く限りはそのようになさるつもりだったと」
「…そう、エドありがとうね。あなたのおかげで皆からの手紙が守れたわ」
「いえ…私は、そんな」


今、気づいたことがある。私には大切なものがたくさんあるんだ。今まで守るものなんて何もなかった。いつも一人なんだって思ってた。でも違う。私には皆がいる。大切な仲間や信頼できる存在がいる。


強くならなきゃ、いけない。もう、私のことで迷惑をかけちゃいけない。



「エド、私決めたわ。…何も言わずに、聞いてほしい」
「…お嬢様の決断されたことならば、何なりと」




「私、この家を…出ていく」