俯くことが安心で




では、またいつか。といって別れたレギュラスのことを、もうすっかり体温で温もったベッドの中で思い出す。あの後、レギュラスは家までの帰り方を教えてくれてなんとか我が家に辿り着くことができた。私に散歩を勧めたエドはひどく青い顔で心配してくれて、なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになったけど。


ぎゅっと、胸に手を当ててみた。朝とは違う気持ちで今過ごしていることに不思議な感覚になる。あんなに婚約者という存在のレギュラスが嫌だったというのに、今日のあの出会いでレギュラスの良さをたくさん知ることが出来たのだから。でも婚約者というものにはまだ、納得できていない。


「皆どうしてるんだろう、」


休暇に入って一度も会っていないホグワーツの皆のことを思い出す。手紙を書いて状況を聞くだけなのにそんな些細なことが私にとっては不安なものでしかない。皆は休暇を楽しんでいるんだ。だから手紙はこなくて、今私が手紙を送っても迷惑なだけ。


結局そんな考えのループが続くばかりで頭の中から消えてはくれなかった。


なんて弱虫なんだろう、と今まで生きてきて何回思っただろうか。今でも私がグリフィンドールに入ったことが間違いだったんじゃないかと思うくらい弱虫だ。


一人になるとすぐ心に靄がかかったように不安になって、何かに怯えて。いつか私はこんな日常から抜け出せるのだろうか。


別れた日、シリウスによって撫でられた頭の上の温もりが今はもう遠い日の記憶になってしまって。それを必死で繋ぎとめておくために、無くしてしまわないように、目を閉じる。


あんなにレギュラスといた時はキラキラとした星空だったのに。目を閉じる前に見た窓からの空は、雲によって煌めきは一つもなかった。まるで心を写し出しているかのように。