一つの勇気を




キングスクロス駅9と4分の3番線。一年前に父と別れた日がもう遠い記憶となってしまったくらいこの場所を懐かしく感じる。出来るならばここには戻ってきたくなかったけれど。


「いい?たくさん手紙を書くから、ティアラも返事してね!」
「うん、たくさん書くよ!」
「新学期までにとっておきの悪戯を考えておくよ!」
「えーと…楽しみにしてる」
「身体に気をつけて」
「リーマスもね」
「美味しいお菓子、探しておく、から」
「私も!」
「じゃあ、また新学期!」


皆が別れを惜しみながらそれぞれの場所へと向かっていく。本当は寂しい気持ちでいっぱいだけど、また新学期になったら会えるんだから。そう思って自分も歩きだそうとした。


「、ティアラ!」


もう行ってしまったはずのシリウスが、息を切らしながらこっちに走ってきた。


「ど、どうしたの?シリウス」
「…あー、その、言い忘れたことがあって」
「言い忘れたこと?」


「…寂しくなったら、すぐに手紙を書けよ?誰にでもいい、とにかく我慢するな。そしたらすぐに、お前が悲しむ時間なんかないくらいすぐ、迎えにいくから」


そう言ってシリウスは大きな手で頭を一撫でしてジェームズのところへ、また走っていった。


「シリウス、ありがと…」


皆がいるんだ、昔の私とは違う。そう思って歩きだすと、少しだけ気持ちが軽くなった気がした。そしてホームの端には、懐かしい影。美しいハチミツ色の髪の毛に宝石のように透き通った青い瞳。いつものように黒いスーツ姿で現れたのは、


「、エドワード!」
「お嬢様!お久しぶりでございます!」
「ええ、久しぶりね。元気だった?」
「はい、お嬢様もお元気そうでなによりです。」


しばし再会を喜んでいたけど、大量の荷物やフクロウを抱えた女の子と容姿がとても目立つ男性が並んでいると、嫌でも周りの人の目を引くらしく移動することにした。

エドワードはポートキーを用意してくれて、それで家に帰る。ここまできたら、覚悟を決めるしかない。そんな不安な気持ちが伝わったのか横でエドワードも複雑な顔をしていた。


「いくわ、」


その一言と共に、ポートキーに触れる。そして…私の戦いが始まった。