心に留めて、ずっと



クリスマスも終わって目まぐるしく日々は過ぎていった。もちろんテストだってあったけど、これはリリーやシリウスがたくさん面倒をみてくれてなんとかパスすることができたし。でも、そんな嫌なテストでも学校にいることが出来るんなら幸せなイベントだった。


「ティアラ!準備は出来た?」
「…うん」
「もう少しで列車がくるわ。早く行かなきゃ」


そういっていつまでもぐすぐずしている私の腕をリリーが引っ張って、ようやく寮の外に出た。談話室にはもう人が少なくて、いるのはいつものメンバーだけ。…そう、今日から長期休暇に入るのだ。


「早く行くこう、乗り遅れるのだけは勘弁だ」
「確かにそれは嫌だね、急ごう」

ジェームズとリーマスの声に朝の挨拶もそこそこにして、まだぐずぐずしている私を引っ張って列車乗り場へと急いだ。

列車乗り場にはもう多くの生徒が乗り込んでおり、列車はたくさん煙を出して今にも発車しそうな雰囲気で。慌てて荷物を入り口に詰め込み急いで列車の中に入った。


「…ふう、なんとか席が空いていて良かったわね」
「もう女子寮からおりてこないのかと思ったよ!」
「女の子は準備にいろいろ時間がかかるのよ、ポッター」
「わ、私が遅くなっちゃったんだよ!」
「…そ、そういえば、ティアラは…家に帰るの?」


今までわいわいと各々が話していたところに、ピーターが額に光る汗を拭いながら聞いてきた。その言葉に皆がさっきとは打って変わって静かになり、一気に視線が私へと集中する。


「…一応、帰るつもり、だよ」
「本当に、私の家に来てもいいのよ?両親だって大歓迎だわ!」
「ううん、ありがとうリリー。けど手紙が来てたの」
「…手紙?」


不思議そうな顔をしている皆に、膝に置いていた小さな鞄から手紙を出してそれをリリーに渡した。リリーが私の了承を得て、声に出して皆に聞かせる。


「長期休暇に入ったら、必ず屋敷に戻ること。大事な話がある。駅にはエドワードが迎えに行く。以上…ってこれはティアラのお父様から?」
「うん、そうだよ。入学してから吠えメール以外きたことなかったからびっくりしたけど…。」
「…エドワードって?」
「屋敷の使用人なの。唯一、信用できる人だから…」
「そう…」
「だ、大事な話って、なんなんだろうね!も、もしかして、婚約とか、かな?」
「ば、馬鹿ピーター!お前冗談でもそんなこと言うなよな!」
「い、痛いよ!シリウス!そんなに殴らなくても…」


さっきまで静かになってしまっていたコンパートメント内がピーターとシリウスによって明るくなったことに、なんだか嬉しくなって笑みが零れる。それから皆が笑って、いつも通り暖かい空気が流れた。

今から家にかえって、またあの辛い日常が始まるのかと考えたらすごく憂鬱になる。

けど、そんな憂鬱な気持ちを吹き飛ばしてくれる皆がいてくれることでこんなにも幸せな気持ちになれる。この一年間で皆は大切なことをたくさん教えてくれた。

列車の終着点まではまだたくさん時間がある。だから、今はこの時間を大切にしよう。休暇中、皆がいなくても、寂しくないように。