優しいあなた



「ああもう、心配したのよ!」


シリウスと寮に帰って、リリーにそう言われながら抱き着かれた。苦しくて少し息が止まりそうなほど抱きしめてきたから、背中を小さく叩いて離してくれるように促した。そして周りを見渡せば、リリーの他にもジェームズやリーマス、ピーターがいる。みんな、就寝時間がもうすぐ来るのに、談話室にいてくれたのかな…。


「リリー、皆、本当にごめんね」
「いいのよ、あなたは何も悪くないわ。悪いのは全部この男の子供みたいな嫉妬、」
「ちょ、ちょっと待て!」
「何よ、何か間違いでも?」
「リリー、シリウスは何も悪くないよ」
「…ブラック、ティアラに感謝することね」

そういってリリーは私の手を引いて空いていた暖炉の前のソファーに腰掛けた。それに続いてシリウスや、その周りにいたジェームズ、リーマス、ピーターも同じく暖かく温もったソファーに座っていく。この空間が今は心地好くて、さっきまで気まずさを感じていたのが嘘みたいだった。

「まあまあ、何より平和が一番だからね!今回のことは、シリウスを大目に見てあげてよ!」
「ジェームズ、シリウスは本当に悪くないの」
「ティアラ、いいから」
「本当は私が」
「、そろそろ就寝時間だ。寮にあがろうぜ」
「そうね、明日も早いわ。ティアラ行きましょう」


就寝時間がもう少しで過ぎそうな時、シリウスの一言によって皆が寮にあがろうとしていた。「おやすみ」と声を掛け合う中で階段を上がっていたシリウスのシャツの袖を控えめに引っ張る。


「あ、の…」
「どうした?」
「えっと、あ…リリー、先に行ってて」
「そう?早く来るのよ」

そして女子寮と男子寮のドアの閉まるのを確認して、シリウスと向き合うように身体を向けた。

「あ、のね?」
「ああ」
「えっと…」
「どうした?…また抱きしめてほしくなったのか?」

「ち、違うよ!」
「はは、そこまで勢いよく言われるとちょっと傷つくぜ?」
「あ、違うくは…ない、ような…違う、ような」
「うん、どした?」


ぎゅっと自分のスカートを握りしめて、深く息を吸い込む。


「な、なんで…ウィリアムと、スリザリンの、話…言わなかったの?」
「…そんな、泣きそうな顔してまで喋らなくていい」
「でも、」
「俺は、お前の笑った顔が見たいんだけど」


その言葉にずっと下を向いていた顔を上げるのと同時に頭の上に小さな重みを感じた。


「俺は何があってもお前の側にいる。約束するから」
「シリ、ウス」
「お前が笑ったら、こっちも笑顔になるんだぜ?知らなかっただろ」


「あと…ちなみにこれは俺だけじゃなく、エバンズとかジェームズとか、リーマスにピーターだって同じ気持ちだ」


そんな優しい言葉をくれて、シリウスはおやすみ、と寮に入っていった。その後ろ姿を見送って、自分も女子寮の扉を開ける。


今日はあんなことがあったのに…なんだか、久しぶりにぐっすり眠れる。そんな気がした。