浮かんだ疑問



「あ、リリー。先行っててくれる?」
「ええ…いいけど。どうしたの?」
「ちょっと、友達が」

そう言ってティアラは朝の人で賑わった談話室のどこかに消えていった。…誰かしら?お世辞にもティアラは社交的とは言えない性格だから、自ら人に声をかけることはかなり珍しかった。

「ティアラの友達って…」

朝ご飯を食べにいく人の群れがだんだんと少なくなって行く中で、やっとティアラの姿が見えた。その後、ティアラのとても幸せそうに、笑顔で話している光景がリリーの目に飛び込んできた。


「ああ、リリー!今日は遅かったんだね!でも僕はずっと待っていたよ、君と朝ご飯が食べたいからね!」
「…なによ、」
「リリー、今日もすごく綺麗だ!君は本当に女神より美しい!完璧だよ!」
「…なによ、なんなのよ」
「あ、そういえば、ティアラは?今日は一緒じゃないのかい?まあ、僕は君を見れただけでしあわ」
「なんなのよ!あの男は!」

一人べらべらと喋るジェームズに、もともと感じていた怒りを増大させてついに爆発した。周りにいた悪戯仕掛人たちはリリーのただならぬ怒りぶりに、お互いに目配せしながら様子を見ていた。

「まったく、なんなのよ!あいつは!なぜ!?何で私のティアラと仲良く話してるの!」
「し、知らないよ!あいつって誰だい?でも僕は君にこんなに近づけることが幸せだよ!」

まったく関係ないジェームズにリリーがすごい剣幕で迫り、自分の疑問に答えるように肩を揺らし始めた。そしてそれにジェームズは幸せを感じてしまっている。

「ちょっと、エバンス。とりあえず落ち着こう。何があったの?」
「落ち着こうですって?落ち着けるわけないじゃないの!あんな、あんなティアラ見たことないもの!」
「おい、どういうことだ?」

尋常じゃないリリーの様子を見て、リーマスやシリウスが間に入り、リリーをなだめようとした。

「一緒にいたのは私たちと同じ寮の、3年生のウィリアム・ブロングよ!」
「ウィリアム・ブロング?」
「それって、」
「あなたたちもご存知の通り、優秀なクィデッチ選手のビーターよ!しかも彼は、3年で1番の秀才なの!」

そう言いきったときに、ちょうどティアラとウィリアムが大広間に入ってきて寮の机に向かっていた。その姿はまるで恋人同士のように見えて、さっきまで騒いでいたリリーや、悪戯仕掛人たちも、黙って2人を見ることしか出来なかった。