思わぬ機会



ホグワーツの外には雪がしんしんと降ってる。人が少ない談話室ってすごく心地いい。暖炉の前を占領できるし、なにより人に関わらなくて済む。

「皆なにしてるのかな、」

そういえばリリーから手紙が来てたな。今日の朝、ふくろう便で届いた。遠いところからきたらしくフラフラになりながら梟が運んで来たの面白かったなあ…、なんて思いながらリリーからの手紙を開いた。


親愛なる ティアラへ

元気にしてる?こっちはすごい雪で毎日寒いわ!でもホグワーツもすごい雪なんでしょうね!

そういえば、久しぶりにマグルの世界で生活すると失敗ばかりで困っちゃうわ。魔法がない生活ってとっても不便よ。

早くティアラに会いたいわ!話したいことがたくさんあるの!寂しくしていないか本当に心配。私はもう寂しいわ。

じゃあまた手紙送るわね!

愛をこめて リリー


丁寧な字で書いている手紙にリリーの愛情を感じ嬉しくなって、何回も何回も読み直した。一年前なら考えられなかったこんな日々。手紙をもらったことすらなかったのに。早く早くリリーに手紙を返したくて、急いでレターセットを取りに女子寮に上がろうとした。

「ちょっと、」
「…え?」
「ちょっといいかな」

きょろきょろと辺りを見渡してみても明らかに相手は私の方を見ている。しかも掴まれた手は私のものだった。

「…わ、私ですか?」
「うん、きみ」

にっこり笑って手を離してくれた。…誰だろう?同じ一年生ではないはず。…たぶん。

「知らないよね、僕のこと」
「う、あ、…はい」
「学年違うしね。知らないのは当たり前だと思うよ」
「…は、い」
「3年生のウィリアム。ウィリアム・ブロング。」
「あ、あの…私は1年の」
「ティアラ・フィレイフィスだろ?」

自分の名前なのに先に答えられてしまった。なぜ知ってるのだろう。まず、呼び止められたのは何の用事があったのかな?

「君とさ、話したくて」
「…へ、」
「いや、学年は違うし話す機会なんてないだろ?せっかくの機会だし、さ」
「…はあ」
「あ!怪しくはないからさ!純粋に、まあ、話したくて」

珍しい人もいるものだ。私と話したいなんて。ましてや、違う学年なのに私の名前まで知ってる。…違う意味で有名なのかもしれないけれど。けど彼の笑顔はなぜか昔の名前も知らないあの子を思い出した。あの子も、こんな笑顔で私に話しかけてくれたなあ…。

「クリスマス休暇はまだまだあるんだ。ここは一つ、残り組として仲良くしようよ」

そのせいか、そう言われたときには、休暇中あんなに人と関わりたくないと思っていたのに、頷いてしまっていた。