保健室の外に出ると、廊下には真剣な顔をしたリリーとそんなリリーをじっと見ているジェームズと慌てふためいているピーターとそれを慰めているリーマスがいた。
「な?安心しただろ?」
その光景をみてびっくりしていた私にシリウスが握っていた手をぎゅっとしてくれた。…いや、未だに信じられない。なんでいるんだろう、その気持ちだけが頭の中を駆け巡っている。
「ああ!ティアラ!心配したのよ!」
そういってリリーが私を見つけると抱きついて涙を流していた。顔を肩につけているために服が濡れたけど、それだけ心配してくれたんだと思ったらこっちまで泣きそうになった。
「だ…大丈夫だよ!ごめんね?リリー!」
必死にリリーを落ち着かせようと思って声をかけるがリリーは離してくれなくて、ただぎゅっと抱き締める力を強めるだけだった。
「でも、本当に心配したんだからね?」
ゆっくりとリーマスが近づいてきて私に柔らかな微笑みを向けた。
「まったくだよ!まあ、失敗はよくあることだから気にすることないからね?ほんとにティアラは…リリーに抱きつかれてうらやま、」
お前は黙ってろと言ってジェームズはシリウスに背中を叩かれていたが…、うん。いつもどおりの風景。ちょっと皆と離れただけなのに、こんなにも酷く安心して懐かしく思う。
「っティアラ!ぼ、僕たち心配して、抜け出してきたんだっ!も、もう体は大丈夫なの!?どこか、痛いところとかは!?」
びっくりするくらいの勢いで近づいてきたピーターがびっくりするくらいの勢いで質問してきた。
「あ、うん!もう大丈夫だよ!ありがとね、ピーター。それに、リリーもジェームズもリーマスも…シリウスも」
「…はいはい、もうその位でティアラへの質問終了にしなきゃ。そろそろ、マダムが見回りにくるはずだよ」
確かに今は深夜なはず。それなのにわざわざ皆抜け出してきてくれて、こんなにも心配してくれたんだ。
「また…明日くるから、ね?早く治すのよ?いい?無理しちゃダメだからね!」
「じゃあもう行くよ。ティアラはゆっくり休んで。本当に騒がしくしちゃってごめんね!」
リリーが私から離れて怒ってるのか泣いているのか分からなかったけど、とにかく心配してくれた。そのままリーマスの言葉によって皆が寮へと返っていっていた。
「本当に…無理すんなよ?」
「うん…ありがとう」
シリウスが最後にそう残した後は、不意にシリウスの服をつかみそうになっていた。その手をぐっとこらえて笑顔でシリウスを見送った。こんなにも皆は優しくて、暖かい気持ちをくれる。だからこそ、そのあと残された空虚感がさみしくて、冷たくて、また私を一人にした。
…だめだ、我慢しなきゃ。今まで一人だったじゃない。初めて出会った人の優しさに甘えてしまっている。リリーたちは私を裏切るような人じゃないのは分かってる。そうだと信じてる。心のどこかではまだ人が怖い。
「…怖い、」
こんな気持ちになってしまう自分がとんでもなく醜くて、すごく嫌だった。呟いた言葉は、皆がかえっていった暗闇に少し響いただけだった。