「ついに闇に対する防衛術の授業ができて嬉しいわ!」

意気揚々としているリリーを尻目にわたしはひたすら落ち込んでいた。はっきり言って私はこの科目が大嫌いだった。闇に対する、という言葉を聞いただけで胸騒ぎがして落ち着かなくなる。その瞬間に自分に流れているスリザリンの血を恨む。

「ティアラ?顔色が悪いわ、大丈夫?」
「…全然、大丈夫!元気よ、」

そう?といって、リリーはまだ高鳴る気持ちを押さえられないようにそわそわしていた。それと同時に先生が入ってきて授業が開始された。大丈夫、大丈夫よ…だってグリフィンドールだもの、そう考えるようにして授業に集中した。

「よし、ここまでは分かったな?…じゃあ、ちょっと見本を見せてもらおう。誰か…ああ!じゃあフィレイフィス!やってみなさい」

フィレイフィスの名前が呼ばれた瞬間、教室全体がざわついて私は恥ずかしさと絶望で耐えられなかった。断ることなんて出来なくて、仕方なく前に出ていき先生がやってみせたように杖を持って先生が作り出したなんだかうねうねした気持ち悪い生き物に呪文をかける。

『お前にはスリザリンの血が流れているんだからな』

その言葉が頭をよぎった瞬間、呪文を間違えてしまい自分に跳ね返ってきた。覚えているのはそこまでで、最後にシリウスの名前を呼ぶ声と

『ほんとにでき損ないなのね、』

というスリザリンの生徒の声が耳についたまま、頭のなかが真っ白になった。ああ、やっぱり私には何もないんだ、

歪んでいく景色と騒いでいる大きな声に目から一筋、涙が溢れた。