きみと唇を重ねるたびにわたしの心から愛しさが溢れるの。願ってもいなかったきみとの愛の形だから。だけど君はまた困ったように笑うの。
シリウスと付き合うようになってからホグワーツ中の女の子から非難の目を向けられるようになった。
今日も「なんであんたなんかが付き合ってんのよ!」なんて上級生のきれいな女の人に言われたけど。毎日のように違う女の子の香水の匂いをつけて帰ってきて、それでもわたしに別れを告げないあなた。
果たして彼女なのか、
そんな事を考えるたびにため息がでてきてなんだか切なくなった。そんなシリウスもなぜか愛しく思える自分もそうとうおかしいと思うけど、今日も彼は甘い甘い香りをつけて、私を抱き締めるのだろう。そんなもやもやした気持ちを抱いて寮に帰った。
寮に帰った私は就寝時間ぎりぎりになって図書室に羊皮紙とペンを忘れたのを思い出した。いつもなら放っておくところをなぜだか放っておけなくて、早足でとりにいくことにした。
…これが間違いだったんだ。あのまま大人しく朝とりに行けば、君を困らせることはなかったね。あのまま、この微妙な関係がずっとずっと続くと思っていたんだ。
真っ暗になった廊下に私一人の足音がなる。はやくとりに行かなきゃ…。そうして足を早めた時、聞きなれたはずの名前が耳に飛び込んできた。
「シリ、ウス」
甘い声に呼ばれた君は声の主の名前を呼んでいた。
「いいの?彼女、いるんでしょ」
「ん、ああ。暇潰し、だし」
その言葉と同時にまた甘い叫びを響かしていた。…暇潰し、か。わかっていた。わかってたことでしょ、あのシリウスが私の事を好きになるはずがないじゃない。わかっていたことなのに、涙が溢れるのは何故だろうか。
止めどなく流れる涙に君は気付かないでしょう。
(それでも届かなかった思い)(ただ、)(好きなだけなにね?)