07



「おはよー!シリウ、ス…」


毎朝恒例となりましたシリウスへのハグ、


「ちょ、ヒナ!抱きつくなって」


シリウスの胸に頭を押し付けていつものように抱き締める。


「…違う、」


いつもなら絶対に怒られても離れないのに、今日はすんなりヒナがシリウスから離れた。その光景にシリウスをはじめ談話室にいた寮生が皆驚いていた。


「もう…ばか」


そう言いながらシリウスと別れてリリーと大広間に朝ご飯を食べに行った。


「あれ、あれあれ?相棒、ついにヒナに嫌われたのかい?」
「うるせーよ!というか、なんなんだよ!逆ギレかよ!」


そう言ってシリウスも憤慨しながら大広間にむかっていった。


「ヒナ、ついにブラックのことを嫌いになったのね!」


なぜかすごく落ち込んでいるヒナの背中をばしばし叩きながらリリーが喜んでいた。


「なんだか知らないけどブラックなんかに関わらないほうがいいのよ。これでヒナはわたしのもの、」


変態発言ばっちしのリリーにいつもなら喜ぶはずなのにヒナは相変わらず落ち込んだまま、


「誰がブラックなんかだよ!」


そう言って現れたシリウスはひどく激怒していた。それもそのはず、ヒナに朝から抱きつかれ、その上なぜだか素っ気なくされ、リリーに罵られ…


「まったく、なんなんだよ!」


その瞬間、ヒナは大広間を出ていった。


「あ、ヒナ!」


そうリリーが叫ぶ前にシリウスが眉間にしわを寄せてヒナを追いかけていった。


「っはあ、もうシリウス…」
「くそばかっ!逃げる、な!」
「シリ、ウス!?…もうっ、ばかはそっちでしょ!」


そう言い残してまたヒナは走りだした。


「はあ!?お前、もう一回言ってみろ!」


またシリウスが追いかける。またヒナが逃げる。シリウスが追いかける。


「ふざけるな!ばかシリウス!」


ヒナの目の前には壁、後ろにはシリウス、


「っはあ…お前早いよ、」


そういって腕をつかんでヒナをそのまま抱き締めた。


「は、はなして!」


…おかしい。


「もう、ばかばか!触んな、変態!」


…こいつ、自分のこと棚に上げて何いってんだよ。でも…ちょっといや、かなりか?傷ついた。


「なあ、なんでそんな俺のこと避けてんの」
「…言わない」
「言ってくれるまで離さないから、」
「…離してくんなきゃ言わない」
「もう、やだやだ!頼むから離して!」


そうやってシリウスの胸を必死に押してなるべく顔を離していた。


「離さねえよ、」


そういってヒナの頭ごと手で抱えて抱き締める。…あれ?


「ヒナ…?」
「…」
「おい、ヒナ?」
「…っ!」
「おい!」
「…ぷっはあ、」


なぜか今まで息を止めていたヒナは耐えられなくなったのかわずかな隙間から息をしていた。


「おまえ、息してなかったわけ…?」
「っはあ…そうよ、」
「え、…お前、そんなに俺のこと嫌いな…わけ?」


やばい、やばいやばい、今、…泣きそう。


「嫌い!だいっきらい!そんな、そんな甘ったるい女の子の匂いつけてるシリウスなんて…だいっきらいよ…」


二度目の嫌い宣言、しかも理由は匂いだせ…匂い、匂い!?

「いっつも爽やかな匂いをふりまいてるのに…今日は甘ったるい匂いつけて!知ってるよ、それ今一番女の子に人気の香水だもん!」

そう一息で言ったヒナは真っ赤に顔を赤らめて憤慨していた、


「へ、それ…だけ?」
「はっ!?それだけ?重要だよ!」
「、いや…あの香水は…」
「なに、」
「お前の…」


かなり怒っているヒナは俺のポケットにはいっている紙きれを無理やりとりだした、


「…なに、これ」


紙きれに書いてあったのは


To ヒナ
―――――――――――
誕生日おめでとう

なんていうか…

いつもはいえねーけど、

お前の笑顔に毎日
助けられてる。

ありがとな、


―――――――――――
From シリウス




「っ、これは…その!なんというか、」


紙を見たまま固まっているヒナをみてあたふたしている俺は異常に滑稽で、


「その、お前…誕生日だったろ?…香水あげるつもりだったんだけど、落としちまって…」


その瞬間ヒナがばっ、と俺を見上げて涙をためていた。


「ごめんな…割って、」
「それで匂いが、ついてたんだ…」


そう思うとヒナはシリウスを抱き締め返して胸に頭を預けた。


「おい、嫌いなんじゃなかったのかよ」
「私のための匂いだから大好きだよ」
「調子いいのな、お前」


そう言ってシリウスはゆっくりと頭を撫でてくれた。こいつ…可愛いとこもあるんだな、なんて思ったのもつかの間、


「はっ!それならば、」
「は?」


シリウスの着崩した制服をつかみ、こう一言。


「香水が染み付いてるのはシリウスでしょ?だったらシリウスがわたしの物じゃん!」
「え、ちょ、まて!お前どこ触って、おい!」
「んふふ、シリウス!大丈夫、優しくするから」
「そんなこと聞いてんじゃねえ!」
「愛があればすべて乗り越えられるの!」


前言撤回、こいつただの変態
。シリウス・ブラック、
変態少女に襲われております。





(え、シリウス初めてなの?)(んなわけねーだろ!)(うわ、さいってい、)(ヒナはどうなんだよ)(…シリウスのために、とってんの)