大切なもの



大切なもの守るために強くなりたい。なんて、ただの綺麗事。だいたい人なんて、一人で生きていけるし、誰かの力を借りなきゃ生きていけないような人生なんて絶対いやだと思ってた。

でも、大切なものを守るってことがこんなに難しくて、大変だなんて知るために

私はあなたと、出会ったんだね。


「伊達さん、ついに戦に出発ですね」
「…そうだな」
「大丈夫ですよ!留守の間はしっかり、この城を守りますから」
「…ああ」
「忘れ物ないですか?伊達さん、意外とおっちょこちょいだから」
「…なんだと?」
「あ、私…仕事に戻らなきゃ。…じゃあ」

くるっと踵を返して廊下を歩く。…まだ、大丈夫。

「、なまえ」

振り向かないまま、このままお別れしたかったのに。今、振り向いてしまうと我慢してた涙が溢れてしまいそうだから。行かないで、なんて我が儘をいってしまいそうだから。