隠れる太陽、見えた闇



「おお、そなたがなまえ殿か」
「お初にお目にかかります。みょうじ なまえと申します」

武田信玄という人は、ものすごく威厳のある人だった。嫌な感じはしないものの、全てを見透かされているような気がする。ああ、これがこの乱世を生き抜く戦国武将か。

「そう緊張せずとも良い、そなたはこの甲斐の客人じゃ」
「は、はい」

そうかと思えば豪快に笑うおじさんみたいだったり。なぜ甲斐が明るいか、理由が分かった気がした。

「大概、幸村が無理を言って連れてこられたのであろう。何もないところじゃが、くつろいでくれ」
「ありがとう、ございます」

そう言って武田さん、ええと、お館さまは政務のために部屋を出ていった。本当に私は甲斐に来て良かったのかな…というか、私がこの戦国時代に来たことでかなりの迷惑になってるよね、

「…よし!」
「なまえ殿?」
「私、お手伝いします!女中、さんって言うんですよね?私なんでもします!」
「へっ?」

目を真ん丸にしてる真田さんや、それを見て吹き出すのを耐えてる猿飛さんを無視して立ち上がり、近くにいた女中さんに働かせてくれるよう頼んだ。

「ちょ、待ってくだされ!なまえ殿は客人で、」
「黙ってください!」
「さ、佐助!」
「いいんじゃない?」
「私、あんまり役に立てないかもしれませんがやる気はいっぱいです!」
「だ、駄目でござる!」
「…ふふ、いいんですか。真田さん、私、未来の甘味…作れちゃいますよ」

甘味という言葉を出した途端、真田さんの目が変わった。どんだけ好きなんだ、おい。

「そ、そんな言葉では惑わされないでござる!」
「あれ、いいのかな。ケーキやらクッキーやら、タルトまで食べれちゃうかもしれないのに?」
「けーき、くっきー、たる、と?」

この言葉が決め手だった。交換条件として私は女中として働く権利を得て、その代わりに真田さんには未来のお菓子を作ることになった。いや…なんかすっごく公平じゃない気はするけどね、

「諦めなよ、旦那の負け」
「あれは反則でござる!」
「なまえちゃん、もう行っちゃったよ」

こうして始まった甲斐での生活。明るく、振る舞ってなきゃ、また私は伊達さんを思い出すから。なぜか涙が溢れそうになるから。だから、私は心を隠した。



隠れる太陽、見えた闇



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初めのキャラにやっと戻ってきました。ずっとネガティブな子だったので…

暴走させたいな←


090927 エコ